法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

橋下徹市長が従軍慰安婦問題について、日本だけがやったことではないという正当化をくりかえしたらしい

慰安所制度は、他国のさまざまな戦争犯罪と通じる部分も異なる部分もあり、それをくわしく調べることは大切だろう。しかし、今もまだこのような見解にとどまっているようでは、批判をそらすことが目的と考えざるをえない。
http://www.asahi.com/politics/update/0709/OSK201307090056.html

(旧日本軍の慰安婦問題を)世界各国がどういう風に見ているかといえば、ナチス・ドイツユダヤ人大虐殺、ホロコーストとか黒人奴隷と同じように扱われている。僕はそれはちょっと違うんじゃないですかということを言った。世界各国の軍が、イギリス軍もアメリカ軍もドイツ軍もフランス軍も、第2次世界大戦以後の朝鮮戦争時やベトナム戦争時においては韓国軍も、あってはならないことだけれども、戦争当時、戦地において女性を性の対象として利用したのは厳然たる歴史的な事実だ。

そもそも黒人奴隷やホロコーストと同じようにあつかわれているというなら、他国でもおこなわれていた問題という論点にすりかえる意味がない。黒人奴隷制度もホロコーストも他国でおこなわれていた問題なのだから。
それに、歴史をみれば「奴隷」にしたって「黒人奴隷」に限られているわけではない。たとえば日本の公娼制度なども奴隷制度とみなされていた。つまり、規模が大きかったり有名だったりする問題を特筆して論じることを、ここで橋下市長自身が実行している。これでは日本軍の従軍慰安婦が特筆して批判されることをさえぎることはできまい。もっとも、橋下市長は奴隷制度の深い知見を持っていないままだろうし*1、ここで自縄自縛におちいっている自覚はないのだろう。

*1:外国特派員向けに公開した文書「私の認識と見解」において奴隷制度の知見が欠けていることはこちらのエントリで批判した。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20130527/1369666195