法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

橋下徹市長の5月28日における自虐発言

「と・う・じ・って い・ま・さ・ッ!」 - 法華狼の日記

あたかも会見途中にいきなり質問が発せられたかのような記述だ。しかし日本維新の会YOUTUBEにあげた映像を見ると、先に複数の質問が行われている。

先日のエントリに、下記のようなブックマークコメントがついた。
はてなブックマーク - 「と・う・じ・って い・ま・さ・ッ!」 - 法華狼の日記

id:ruletheworld 橋下無双 中身は読んでない
ぐだぐだ思いつき垂れ流す自由はあるが、ぶら下がりまでチェックするなら5/28見ろよw全部潰してるからw http://www.youtube.com/watch?v=2jsDIQWA9542013/06/04

「中身は読んでない」というタグをつけながら「全部潰してる」と主張できる神経がよくわからない。
ぶら下がり発言を私が確認したところまではエントリを読んだらしいが、それは橋下市長が「知るべき」として示した雑誌記事へ反論するためだ。他のぶら下がり取材まで私がチェックする義務はない。


その上で5月28日会見のYOUTUBE映像を見たが、やはり私の疑問や批判に対する答えは見当たらなかった。
たとえば、2007年の閣議決定に対する無理解を重ねて主張している。さらに、見出しで誤報されたという主張を延々と続けながら、全体を報じた当初の記事から批判がつづいていることには反論も言及もまともにない。
もちろん予想されたことだ。私は6月初頭の橋下ツイッターにおける主張を確認しているのだから、それ以前の会見で充分な回答がなされているとは考えにくい。

ただ、開始20分以降の発言は味わい深かった。「記者の人というのは公人に対して変なスイッチが入るのかね」「初対面の相手にね、おまえちゃんと答えてないだろとかね、そんな言葉をかけますかね」「毎日新聞の記者っていうのは非常に横暴だなと思いましたね」「毎日新聞記者が、すごい、日本人記者の席で社会人としてのありえないような言葉を……僕は初対面で会ったこともないのに、まあそういう言葉を発していた、といいますからね」……この伝聞*1にもとづく一連の毎日新聞批判は、さすがにおまえがいうなという感想をいだかずにいられなかった。
また、34分で「なぜ日本だけが不当に批判を受けるのか」と主張しているが、世界が誤解しているという根拠が、あいかわらず具体的に示されていない。どの報道記事や政府見解なのかを示していないのでは、いわゆる「藁人形論法」のそしりをまぬがれない。
さらに37分ほどで、「じゃあ、こいつは、ああやっぱり女性の利用をやっぱり必要だと感じてるんだなあ、とか思ったわけですね。そこを問うてもらってですね」「一言いってくれれば、僕は違うという風にいいました」と記者が質問を重ねなかったことを批判している。しかし、当時の会見全体を見れば、その流れで在日米軍に風俗利用を勧めていたことがわかる*2
最後に46分ごろ、「あの時は歴史認識の話で、僕はもう侵略ってことを認めるってことに関して、まあそこが一番大きな僕の発言の趣旨だったという風に僕は認識していました」と、またしても最も主張したかった部分がどこかを変えている。ただし当時の会見全体を確認しておくと、「侵略の定義については学術上きちんと定義がないことは安倍首相が言われている通りです。第二次世界大戦後、事後的に、国連で安保理が、侵略かどうかを最後に判定するという枠組みが決まりましたけれども」「学術上さだまっていなくてもそれは敗戦の結果として侵略だということはしっかりと受け止めなくてはいけないと思いますね」*3と語っていた。直後に「実際に多大な苦痛と損害を周辺諸国に与えたことは間違いない」とも語っていたが、「侵略」という認識を「敗戦の結果」として受けいれるという論理で語り、学術的に定まっていないと主張していたことに変わりはない。


いずれにせよ、ruletheworld氏のタグにある「橋下無双」は、現実に存在する橋下徹市長を指しているわけではない。
おそらくは批判されている部分から目と耳をふさぎ、記者が厳しく追求しないことに甘えて、存在しない批判に反論することで勝利を演出している政治家を盲信した、その結果として生まれた幻にすぎないのだ。