法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

野菜を洗剤で洗うという、料理ができない記号表現について

一ヶ月ほど前のことだが、『ドキドキ!プリキュア』第6話で、異世界から来た少女が料理で不可思議な失敗をする描写があった。
http://asahi.co.jp/precure/story/backnum_06.html

まこぴ〜がオムライスづくりをはじめたんだけど、
なんだか、まこぴ〜のようすがヘン!?
やさいをせんざいであらっちゃうし、タマゴはつぶしちゃうし…。

その感想エントリに対して、はてなブックマークで興味深い指摘をいただいた。
はてなブックマーク - 『ドキドキ!プリキュア』第6話 ビックリ!私のお家にまこぴーがくる!? - 法華狼の日記

id:mtfumi
どうでもいいことだけど、野菜を洗剤で洗うのが料理のできない人の行動というテンプレはどうかと思う。食器用洗剤の使用法に野菜ってあるのに。2013/03/13

そうだったのか、と驚いてインターネットで検索してみると、日本石鹸洗剤工業会サイトに、くわしい台所用洗剤の解説を見つけた。
日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識 台所

昭和30年代の初め頃から登場した台所用洗剤は、食生活の洋風化が進んで油汚れが増えるなど、水洗いだけではきれいに洗えなくなった食器を洗う洗剤として普及しました。また、野菜や果物も洗えるというのが、大きな訴求ポイントでもありました。当時は、野菜や果物についた回虫の卵や農薬なども、台所用洗剤で洗えばきれいになり安心できるという、食生活の衛生上からの役割も大きかったのです。

むしろ出始めのころこそ、食材の洗浄目的で求められていたという話は、初耳だった。
ただし食品衛生法の関係から、中性洗剤でなければ食材を洗ってはならないらしい。近年は肌荒れを防ぐために弱酸性や弱アルカリ性の洗剤が普及していることと、食材環境の変化についての解説もあった。

「弱酸性」「弱アルカリ性」の台所用洗剤は、いずれも中性洗剤ではないので、食品衛生法上は、食器は洗えても、食品である野菜果物を洗うことができません。
野菜果物も洗えるという従来の中性の商品特性を捨ててしまった商品もあえて加えたのは、一般家庭ではそのニーズが廃れたことがあります。昔のように野菜果物の回虫の卵を心配する必要もなく、台所用洗剤で野菜果物を洗えるということをわかっている人、必要と思う人が減ったのも、時代の変化というものでしょう。なお、業務用では食品の洗浄に中性洗剤は広く使われています。

さらに調べてみると、『ドキドキ!プリキュア』第6話の次回予告公開時から詳細な議論がされており、そのまとめがあることにも気づいた。
野菜の清浄化の歴史 - Togetter
放映後にid:koinobori氏がまとめたエントリもある。
台所用洗剤の歴史 - 顧歩日記


こうなると不思議になるのが、食材を洗剤で洗う描写が、いつから料理のできない人間の典型とされるようになったかということ。
むしろ食材を洗剤で洗う必要がなくなったのに、洗剤を使い続けている世代との意識の差が原因なのかもしれない。実際、主婦コミュニティサイトで、野菜を洗剤で洗う義母との衝突が相談され、必ずしも悪いことではないから折り合いをつけるようにとの回答がされていた。
野菜を洗剤で洗う義母、原因不明の胃痛に困惑… | TALKING/井戸端会議 | お嫁さんな日々 - with Vanilla Fudge

某アイドルさんは、お米をも洗剤で洗ったと聞いたことがありますよ(汗)
昔は野菜の農薬や寄生虫を除去する目的で、野菜を洗剤で洗うことが推奨された時代があるそうですが、今は農薬の進化や基準も厳しくなって、洗う必要はないような気がするんですけど…。
私の使っている一般的な中性洗剤は、「油汚れに強い」がうたい文句ですが、用途を読むと野菜・食器用洗剤とあります。 野菜、洗って良いみたいです。
洗剤や農薬の危険性もさることながら、相談者のうまうまさんが上手にお義母さんと折り合いがつくアドバイスや入れ知恵も併せてお願いします!

あるいは、この回答のように、米を研ぐ時などの洗剤が不要な状況で使用した失敗が、いつしか野菜や果物の洗浄も失敗だという風に混同されていったのかもしれない。
いつから洗剤で食材を洗うことが問題視されたのか、その発端についても知りたいところだが、インターネットでは見つけられなかった。