法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

原作改変と必要充分

浅香守生監督のTVアニメ『GUNSLINGER GIRL』を低評価し、原作者が監修して主導した『GUNSLINGER GIRL ‐IL TEATRINO‐』を高評価する者だけが原作改変者に石を投げなさい」
「『WORKING!!』や『けいおん!』のTVアニメに対して、原作に忠実なキャラクターデザインにするよう怒った者だけが原作改変者に石を投げなさい」
「TVアニメ『へうげもの』を見て、途中から原作クレジットが原案クレジットへ変わることを予測できた者だけが原作改変者に石を投げなさい」
「映画『ルパン三世 カリオストロの城』がアニメオリジナル作品と知っており、なおかつ映画『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』でルパン像が間違っていると下部スタッフが監督に意見したことを知る者だけが原作改変者に石を投げなさい」
大山のぶ代が主演した時期の『ドラえもん』を低評価し、2005年にスタッフや設定を一新したTVアニメ『ドラえもん』を原作に忠実だと高評価した者だけが原作改変者に石を投げなさい」
「スタンリー=キューブリック監督の映画『シャイニング』を全否定し、スティーブン=キング脚本のTVドラマ『シャイニング』を肯定し、スティーブン=キング監督の映画『地獄のデビルトラック』を絶賛する者だけが原作改変者に石を投げなさい」


2005年にリニューアルされた『ドラえもん』に対して「黒目の中心にハイライトが入るのは原作通り」「源静香が茶髪から黒髪になったのは原作通り」「階段の位置関係等、野比家の間取りも原作通り」「その台詞は原作通り」「その行動は原作通り」「そのネーミングは原作通り」と説明しつづけた一人として、わずかな原作改変を根拠としてアニメスタッフを否定できると思っているらしき人々の多さに、いささか衝撃を受けている昨今。
念のため注意しておくと、リニューアル前の『ドラえもん』を原作者が否定していたわけではない*1。映画制作などに深く関わり、アニメオリジナルの中編映画においても制作会議で意見していたことが明らかにされている。
さらにいえば最近にリメイクされてTV放映もひかえている『宇宙戦艦ヤマト』のように、原作とされている作品と企画全体の関係が複雑な作品も多いのだが、話が長くなるので省略する。


ともかく、原作を可能な限り再現してほしいという願いや、原作者の意思を尊重するべきという話を否定しているわけではない。原作と同じ描写にしたほうが出来が良くなっただろうという意見に対して、それが必ず間違いだといいたいわけでもない。
ただ原作改変がされただけでは、否定評価の充分条件にならないし、必要条件というわけでもないということだ。もちろん、個々人の主観にとどまるならば、その個々人にとって必要でも充分でもかまわない。


そして、できれば原作から改変された場合、なぜ改変されたのか考えるという楽しみも知ってほしい。悪い改変が、原作の良さを再確認させることもある。素晴らしい改変は、原作の良さを浮き上がらせることすらある。
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過去から原作から改変された映像化や小説化は数多く、改変した作品が高評価を受けることも珍しくない。
反射的に好き嫌いを表明することは楽しい。私もよくやる。だが、じっくり考えながら良さ悪さを反芻することも楽しいものだ。

*1:一度目にアニメ化された日本テレビ版に対しては否定的だった。