法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ミステリクロノ3』久住四季著

天使の落とした道具「クロノグラフ」。今回は装着された者が幼児退行していく「リグレスト」というクロノグラフが登場する。
それどころかクロノグラフ回収を命じられた天使が誘拐され、主人公と友人は街を東奔西走する羽目になる。


表紙イラストが主人公の少年というところ、ライトノベルの表紙が媚びた少女ばかりという固定観念をくつがえす……と思ったり思わなかったり。しかし、全てのクロノグラフは回収できてないのに、三作目にしてシリーズ打ち切り状態。だから好きなようにやれたということなのだろうか。
基本的にはシリーズ伏線の回収に追われているため、ミステリらしいプロットは簡素。現在進行形のサスペンス展開へまぎれこますように、ちょっとしたトリックを混入させたといったところ。
かといってシリーズの伏線が充分に回収されたとはいえない。主人公とヒロインを軸にした人間関係の安定化と、天使がこの街にきた本当の理由が示唆されるにとどまり、はっきりと物語が完結したという感じはしない。
結局、映画などの三部作のジンクスどおり、シリーズ二作目が最も面白かったかな。
『ミステリクロノ2』久住四季著 - 法華狼の日記


さて今作の話に戻すと、誘拐されたのが天使であるため、必然的に警察をたよれない。そして天使はクロノグラフで幼児退行していく。
そのため足を使って走り回るタイムリミットサスペンスが発生する。その勢いに隠して、ある種のトリックも展開している、といったところ。予想できる範囲内ではあるが、サスペンス部分がライトノベルとして充分な密度をもっているので、単独では、それなりの楽しみはあった。