法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ジェネレイターガウル』雑多な感想

未来から来た3人の少年が、全世界をまきこむサードウォーを止めるため、運命に立ちむかう。水島精二監督。
ニコニコ動画タツノコチャンネルで無料配信していたのを機会に視聴した。SF設定のよくできた良作とは聞いていたが、当時にDVDを買い逃して以来、視聴する機会がなかった。
http://ch.nicovideo.jp/gawl


監督デビュー作として、後の水島監督作品に見られる長所と短所がつまっている。
全体として、全12話でよくまとまっている。放映期間が短いおかげで、中だるみもしていない。特に良かったのが時間移動SFらしい展開。視聴者に予想できるキャラクターを前面に配置して、時の残酷さを痛感させるキャラクターを隠しとおし、見事に驚かせてくれた。
作画演出も高いレベルで安定しつつ、当時のタツノコプロ精鋭や京都アニメーションが参加することで、特筆すべき見どころも多い。特に中村豊作画らしい最終回の人体崩壊など、絶品であった。
アニメに3DCGが導入されはじめた時期の作品だが、まったくといっていいほどCGを用いないことで、見ていて違和感がなかったところも面白い。逆に、CMアイキャッチやテロップを何度も変化させたり、予告映像で実写を用いたり*1、枯れた技術では存分に遊んでいた。


ただし、素直なボーイミーツガールではなく、恋愛描写は放置され気味。不在の母親によって救われたり、ラスボスが欲望にまみれた女性であったり、『鋼の錬金術師』を思わせる決着だった。この作品においては効果的だったと思うが、後の監督作品では序盤の人間関係を放置する欠点と感じることも多い。


そして数少ない不満点として、敵を倒すアクションと、物語のテンションが一致していないことがある。主人公の倒すべき目標や、物語を動かす障害としての敵ではなく、あくまで日常の裏で進行するSF展開の象徴でしかない*2。結果として、せっかく作画演出に力を入れた戦闘が、ノルマにしか感じられないことが多かった。この特徴は、後の水島監督作品ほとんどに共通している。

*1:未来警察ウラシマン』のパロディかもしれない。寄寓にも同時期に配信されている。

*2:同時期の深夜SFアニメ『ベターマン』が、戦闘担当と視点担当が別個だったりと、はるかに難解な構成だったのに、1話完結で敵を倒すアクションとしては楽しめたことと好対照。