法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドキドキ!プリキュア』第7話 ギリギリの戦い!さらば、プリキュア!!

ひとつの山場らしく、脚本を山口亮太が担当し、山岡直子と高橋晃が作画監督をつとめる。
ある意味で今作独自の面白味が充実していた。


前回の結末で、いきなり登場したベールによって異世界へ落とされるプリキュアたち。妖精とも分断されつつ、元の世界へ戻る道をさぐりながら、異世界の過去について知っていく。
シリーズ過去作での異世界は、全体的に御伽噺めいていたり、管理社会設定としても古臭かったり、制作リソースを節約するようにシンプルにまとめていたりしたことが多かった。
それが今作では、プリキュアが逃げまどう舞台装置として、栄華を誇っていた時代との対比として、魅力的に廃墟都市を描いた。動くものは、大勢の敵と水面だけ。孤立感とともに、きちんと構築された異世界を移動している楽しさもあり、ちょっと中高生向けアニメのような味わいがあった。


そして元の世界へ戻れる唯一の道は、たどりついたと思った瞬間に砕かれる。やる気のない性格として描かれ続けていたからこそ、ベールが先回りしていた展開に意外性があったし、性格を抜きにした能力と知力の高さが感じられる。
対するプリキュアも、仲間が絶望する中で、ただ相田だけが真顔で笑い声をあげ、元の世界へ戻れる方法が残っていることを指摘する。たしかに理屈は通っているが、その場面で瞬間的に発せられるメンタルがおかしい。「なんとかなるなる」や「ウルトラハッピー」といった口癖が象徴する、無根拠だからこそポジティブだった過去シリーズのプリキュアとは正反対だ。
そしてシャンデリア落下で転がされるベール。真正面から正攻法で戦いながら、「小娘」の奇策とメンタルに圧倒されていく。相田の理屈が正しくても誤っていても、プリキュアと戦わざるをえない状況に困惑する姿で、いっそ共感してしまう*1


キャラクターごと場面ごとの動機や目的が明快で見やすく、共感を排しているがゆえの面白味を感じた。ジコチュー化の経緯や四葉財閥の専横といった、通常回でのツッコミどころもない。そしてクライマックスで主人公のキャラクターがそそり立つ。
期待していた方向性とは異なるが、面白くはあった。この方向性を今後につきつめるのは難しいとは思うが。

*1:このベールという男、『絶縁のテンペスト』の愛すべきキャラクター左門さんの、同族かもしれない……