法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

話数単位で選ぶ、2012年TVアニメ10選

今年も参加。ルールは下記の通り。
話数単位で選ぶ、2012年TVアニメ10 karimikarimi選 - karimikarimi

・2011年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につきなるべく上限1話。

・思いつき順。順位は付けない。

ドラえもんのび太が出会った仮面の女王(水野宗徳脚本、八鍬新之介コンテ演出、田中薫作画監督

2011年TVアニメ10選*1に選んだ『ドラえもん』と、ほぼ同じスタッフ構成。石器時代を舞台とした冒険活劇として完成度が高かった。
『ドラえもん』のび太が出会った仮面の女王 - 法華狼の日記
風刺性が前面に出すぎていて物語としては薄かった原作を、アニメ演出で強調した回も印象深かった。しかし展開は原作をほぼ踏襲しているだけなので、アニメオリジナルストーリーに軍配をあげた。
『ドラえもん』パパとのび太と酒の泳ぐ川/しかえしミサイルが飛んできた - 法華狼の日記
誕生日SPの作画は今年もすばらしかったが、叱責の価値をうたう主題に葛藤がなく、SF設定も粗かったため、全体の印象は良くない。

銀河へキックオフ!!』第14話 オウンゴール山田隆司脚本、宇田鋼之介コンテ、いとがしんたろー演出、鈴木信一作画監督、関崎高明アクション作画監督

止め絵やバンクも多用しているが、TVアニメとは思えないほど安定した作画で、ていねいに少年サッカーを描写する作品。そこからあえて、試合でもなければ主人公の出番も少ない、コーチという大人が過去と現在の痛みに向きあう話を選んだ。
子供らしくないと批判される「悪魔」の攻撃方法を、あえて個性として許す指導者の覚悟。治らない傷を負わせた教え子の元気な姿に対して、単純に喜べないまま、言葉にならない衝動をかかえて坂道を駆ける姿。どうしようもなく大人な痛みが、しみいる。

エウレカセブンAO』第二十四話 夏への扉會川昇脚本、村木靖コンテ、京田知己コンテ演出、小森高博/可児里未/山崎秀樹作画監督、吉岡毅メカ作画監督織田広之吉田健一キャラクター監修)

多くの世界を渡り歩く物語だからこそ、ひとつの世界の大切さを描けた。数多くの謎や伏線を残しながら、最終回で見事に回収。前作TVアニメと劇場版で不満が残った主題にも、きちんと現代的な決着がつけられた。
『エウレカセブンAO』第二十三話 ザ・ファイナル・フロンティア(episode:23 Renton Thurston)/第二十四話 夏への扉 - 法華狼の日記
シンプルな筋立てで、よりアニメらしい映像の魅力を前面に出した第二話も印象深かった。
『エウレカセブンAO』第二話 コール・イット・ホワット・ユー・ウォント(episode:02 AO's cavern) - 法華狼の日記

スマイルプリキュア!』第27話 夏のふしぎ!?おばあちゃんのたからもの(成田良美脚本、境宗久演出、稲上晃作画監督

今作は語り口が勢いまかせで、真面目な主題が滑りがちだった。しかしこの回は、主人公が中心となりながら、よく話がまとまっている。現代社会らしい問題から導入しつつ、説話という作品全体の題材を、ひとつの物語として過不足なく消化した。
『スマイルプリキュア!』第27話 夏のふしぎ!?おばあちゃんのたからもの - 法華狼の日記
境回は今作において外れなし。アクションも小気味よく動き、ロケハンした里山の風景も美しい。

新世界より』第十話 闇よりも(浦沢広平/十川誠志脚本、山内重保コンテ演出、羽山淳一作画監督

登場人物は少なく、舞台は狭く、ねじくれた風景、奇形化する生物……心象のごとき情景だが、語られる言葉は内面に閉じこもらない。少年と少女はたがいに思いやり、それゆえに別れる。
ある意味で安定の山内演出。第五話より本領が充分に発揮されていた。感情によりそった映像でいて、重要な設定の解説もこなしている。

戦姫絶唱シンフォギア』EPISODE13 流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして――(金子彰史脚本、伊藤達文コンテ演出、片山貴仁/後藤麻梨子/塩川貴史/式地幸喜/舘崎大/浜津武広/小池智史藤本さとる光田史亮作画監督

最初はEPISODE11を選ぼうかとも思った。素手の人間にラスボスが敗北寸前に追いこまれ、「抗うも覆せないのが運命なのだ(震え声)」という台詞がギャグでしかない素晴らしさだったのだ*2
しかし、そうしたトンデモネタを何度も出した最後に、まだ「月を落とす(キリッ)」という大ネタを用意しているとは予想できなかった。
『戦姫絶唱シンフォギア』EPISODE13 流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして―― - 法華狼の日記
ここまで壮大なバカの塔を積み上げられると、凡人としては仰ぎ見て感動するしかない。挿入歌や作画リソースへの注力も、不思議なバランスの作品だった。

さくら荘のペットな彼女』第8話 どでかい花火をあげてみろ(花田十輝脚本、いしづかあつこ/宮浦栗生コンテ、池端隆史演出、冨岡寛総作画監督、藤部生馬/マサユキ/矢向宏志/直谷たかし作画監督

プレゼンのため練習を重ねて準備しながら、予想外の質問で崩れていく主人公が痛々しい。だからこそ、第6話で失敗した者とともに強引に祝祭の場へつれだされ、同じ寮の住人として、同じように前進するしかないと確認する結末が、力強く感じられた。イベントを順番に消化するのではなく、数話前の出来事を受けて多面的に描くことで、青春群像劇らしさも際立った。
花火を前に飛び上がる少女の姿など、視覚効果を強調するため原作を改変する、アニメ化の方向性を象徴する回でもある。

しろくまカフェ』アニマル草野球・前編/ジャクーコーヒーってナンダ!?/アニマル草野球・後編(世田八智脚本、佐山聖子コンテ、田中智也演出、菅野芳弘/竹田欣弘作画監督

オールスターでスポーツを楽しむ前後編と、擬人化した動物でリアルな日常を描く中休み。
1年以上にわたって安定して楽しめているTVアニメ作品で、各話完結ということもあり、選びにくい。そこで、作品の面白味が最もわかりやすい回にした。

『しばいぬ子さん』第14ワン 女神誕生(ぴっぷや脚本コンテ、吉田正弘演出、Manasita作画監督

擬人化した動物がしばしば半裸なことから、衣服は人間にとって肉体の一部と考えられる。また、自主規制は、ひとつの表現であり、手法として活用しうる可能性がある。そうした哲学的にも深遠な問いを、資本主義の走狗が高度に止揚した掌編。
……のような気がしたが、ただの錯覚だ。現代アニメの枠組みでなければ成立しないネタという意味で、今年を象徴する話数ではあると思う。

好きっていいなよ。』第一話 キスをした(佐藤卓哉脚本、黒柳トシマサコンテ演出、竹田逸子作画監督

初回の演出は、今年の秋クールを代表する尖りぶりだった。心象のように挿入される風景、緊張感のあるカット割り。
残念ながら中盤からは、主人公の恋している少年が、いささか魅力の欠けた言動ばかり目立つようになってしまったが……


今年は例年よりも個別回に力を注いだ作品が少なく、選ぶのが難しかった。『ちはやふる』『謎の彼女X』『LUPIN the Third -峰不二子という女-』『坂道のアポロン』『戦国コレクション』といった各話に見どころがあって選べなかった作品も多い。比べると高低差はあるが、『聖闘士星矢Ω』『K』も同様。