法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ONE PIECE エピソードオブルフィ 〜ハンドアイランドの冒険〜』

本郷みつると森田宏之が連名で監督としてクレジット。2人ともさまざまなジャンルと会社で仕事をしてきたアニメ監督だが、ほとんどニアミスすらしたことはないし*1東映アニメーション作品にかかわったことも少ない。かなり意外な登板ではある。それぞれ実力ある演出家だけあって、演出面では全く問題なし。
TVSPながら、作画も素晴らしかった。原画には森田宏之もクレジットされ、他にも丸英男、すしお、井口忠一、等々のアニメーターが参加している。作画監督は多めだが、キャラクター作画のぶれは少なく、エフェクト作画の方向性だけ変化する。ざっくりしたフォルムだったり細かく書き込んだりと、さまざまな爆煙作画を堪能できた。中盤の海で怪物に襲われる場面の動きや、終盤で破壊された建造物の破片が直方体だったりした作画も印象的。
また、作画と演出どちらの方針かは不明だが、ゴム人間の動きに弾力性が感じられたのも良かった。読みきりマンガを読んだ時に想像していた動きに近い。だからTVアニメ化された初期は、等速で伸び縮みするゴムらしからぬ動きや、手足が伸びたままな描写も多いことに、落胆したものだ。


物語は、一時期に海賊の勢力争いがあった島を舞台として、海軍基地からの砲撃に恐怖する島と、その砲撃を避けようとして島へ落下した主人公たちの活躍を描く。
歓迎して協力した警察力に牙をむかれた島民の姿は、最近のマンガやアニメでは珍しい直球の風刺。もちろん、海軍を全否定することはなく、基地を統括する准将の出世願望が暴走したものとして処理される。あくまで娯楽作品らしく、海軍と海賊それぞれの立場で信念をつらぬく若者たちの物語として終わった。しかし、こういう作品が人気を集めていることに、現代社会の状況と比べて、ちょっと感じるところはある。
ルフィ以外の主人公勢はドラマにからまないが、まんべんなくバトルで活躍。過去エピソードのキャラクターも再登場しつつ、実はただの人形だったり、主人公勢とはニアミスするだけで、今後のTVアニメ展開と矛盾しないよう注意がはらわれていた。
不満点として、特殊な蝋を利用した攻撃などの前振りはあからさまで、説明台詞の後に説明された状況が描写されたり、テロップが多用されたり、わかりやすさ優先は目についた。しかし、TVSPという媒体ではしかたないか。


なお、ルフィの初期エピソードは回想として処理。それも、視聴者へ主人公の設定を紹介するためというより、海賊になった経緯を改めてふりかえり、有名な海賊たちの列に主人公も加わったことを示すための回想だった。
その直後、海賊王宣言を否定する台詞から映画予告が始まるのも、TVSPスタッフの意図かどうかはさておき、印象的には残った。

*1:シンエイ動画制作の『ドラえもん』に、それぞれ参加したことくらい。しかしこれも時期や媒体にずれがある。