法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『続・兵隊やくざ』

長期シリーズの第2作が第1作より面白く感じた、珍しいケース。監督は増村保造から田中徳三*1へ交代。


第1作目は、懲罰を屁とも思わない大宮初年兵がやってくることで、旧日本軍の縦割り社会が笑い飛ばされる、ただそれだけの内容だった。
軍隊らしいホモソーシャルな空気も描かれていたが、訓練シーンは少なく戦闘シーンは無きにひとしく、敗戦間近の満州を舞台にした意味が感じられなかった。
蒸気機関車を切り離して脱走するクライマックスくらいしか活劇らしい活劇もない。


しかし、この第2作目では、奪ったばかりの蒸気機関車が爆破される*2冒頭から、戦争映画らしいシーンが頻出する。
善良な将校と卑劣な将校の衝突があったり、その2人にはさまれて兵隊相手の売春婦が抑圧されている姿が描かれたり*3。冒頭で負傷した主人公たちを介護した従軍看護婦が、終盤で将校から手篭めにされかける展開も、旧日本軍の戦争犯罪でよくみるケースを、うまく物語へ組み込んでいた。
第1作では語り部にすぎなかった有田三年兵も、民間人の老人が度胸試しに処刑対象とされたところを、体をはって止める。大宮初年兵にしたわれる人間らしい、そして主人公らしい格を見せた。その民間人の老人と娘を逃がした直後に、敵が攻撃してくる展開もある。しかし攻撃と逃がしたこととの関連を説明したり、逃がしたことの葛藤を描かない。それが逆に誠実で良いと感じた*4
第2作目でも最終的に脱走するのだが、第1作以上の大立ち回りを演じ、手篭めにされかけていた従軍看護婦まで救う。シリーズ続編らしいスケールアップが、ちゃんと映像から感じられた。

*1:『忍びの者 霧隠才蔵』は今一つだったが、そもそも霧隠才蔵が主人公になってからの『忍びの者』シリーズ全体が評価しにくいので、田中監督個人の問題ではなかったのかもしれない。

*2:露骨なミニチュア特撮だが、許せるチャチさ。結果的に敵の攻撃から仲間を救ったため、脱走が不問にふされるという導入も、それなりに納得できる。

*3:街の売春宿にいるところをみると、いわゆる従軍慰安婦とは少し違うようだ。

*4:前後して有田が処刑を批判する場面で、このようなことをするから八路軍へ民間人が味方するのは当然といった批判をしている。