法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

過去の謝罪や歴史研究を台無しにする名古屋の政治家は、河村たかし市長だけではなかった

米国の高校副読本に南京事件の犠牲者数が40万人と記述されていることを問題視しているらしい。たしかに日中それぞれの有力説ではない。
しかし、軍民合わせての死者数40万人以上という説は、少なくとも終戦直後の戦犯裁判でも見られる。戦後日本でも、蒋介石の主張した43万人説が産経新聞社『蒋介石秘録』に記述されていた*1。つまり、現在の中国が採用している犠牲者30万人説は、数字としては減少しているわけだ。
そして今回の40万人説は、日中に比較して研究に熱心ではないだろう連合国側が、とりあえず採用した説だ。歴史的な根拠もあり、経緯としては奇妙とはいえない。
http://mainichi.jp/select/news/20121014k0000m040108000c.html

 1937年に中国で起きた南京事件を巡り、米ロサンゼルス市の高校が使う副読本に犠牲者数について、日中両国の有識者の主張より多い「40万人」の記述があるとして、名古屋市議2人が14日、ロサンゼルス市に向かい、教育関係者と協議することが分かった。両市は姉妹都市で、河村たかし名古屋市長も「事件について意見交換したい」との趣旨のメッセージを市議に託す。沖縄・尖閣諸島の国有化で日中関係が緊迫化する中、協議の行方は論議を呼ぶ可能性もある。

特に犠牲者数を低く見積もる新たな有力説があるわけでもないのに、他国と「協議」できるような数字とは思えない。日中それぞれの学説は全て推定数でしかなく、事件の対象となった範囲も論者によって異なる。それぞれの犠牲者数は、独立して成り立ちうるのだ。
また、あえて皮肉るなら、教育に対する内政干渉というものではないのか。

 市議によると、河村市長がロサンゼルス在住の日系女性から数年前、南京事件の質問を受けたのをきっかけに副読本の存在がわかった。副読本には「(南京では)日本兵の銃剣の練習台にされたり、機関銃で撃たれて穴に落とされるなどして、40万人の中国人が命を落とした」などの記述があった。河村市長は「副読本とはいえ、姉妹都市の教科書に根拠のない記載があるのは見過ごせず、議論が必要」との考えを示している。

 日中両国の有識者による「日中歴史共同研究委員会」では、南京事件の犠牲者について中国側が「三十余万人」、日本側が「20万人が上限」と主張し、2010年の報告書では両論を併記している。

この記述によると、河村市長は過去に何が批判されていたのか理解していないままで、今なお勉強不足のまま口を出している。
そして毎日新聞も、市議や市長の行動に報道として可能な範囲の論評を行わないのみならず、犠牲者数40万人説がたしかに存在することすら無視しており、内容が不十分だ。

 ◇「無根拠と主張」

 訪米する市議は「日中関係は緊迫しているが、言うべきことは言わないといけない。『40万人』に根拠がないことや、事件について両国の主張が違うことを伝える」と話す。

 河村市長は2月、同じく姉妹都市である南京市の共産党市委員会常務委員らが名古屋市を訪れた際、「通常の戦闘行為はあって残念だが、南京事件というのはなかったのではないか」と発言。これを受けて南京市は名古屋市との交流を停止している。【三木幸治】

名古屋はロサンゼルス市との交流も停止させるつもりなのだろうか。それぞれにとって最初という、記念的な姉妹都市なのだが。
ロサンゼルス市 - 名古屋姉妹友好都市協会

名古屋市は在名古屋米国領事館よりアメリカの都市との姉妹都市提携についての打診を受けました。そしてロサンゼルス市がアメリカ西海岸第1の商工都市であること、優秀な施設を誇る大港湾都市であることなど、その地位と性格が名古屋市に最も似ているという点から、提携に至りました。名古屋市とロサンゼルス市は、両市にとって最初の姉妹都市です。

*1:『南京への道』朝日文庫版378頁。