法華狼の日記

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自民党の高村正彦副総裁が従軍慰安婦問題を否認する虚偽主張

時事通信記事が伝えている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012101000925

 自民党高村正彦副総裁は10日夜、都内で講演し、旧日本軍による従軍慰安婦問題について「韓国で日本の軍が直接的強制連行をした事実はない。韓国以外ではあったが、日本軍による軍法会議で裁かれた」と述べ、強制連行があったとする韓国側の主張に反論した。
 また、自身が外相を務めていた1998年に日韓共同宣言をまとめた際、金大中大統領(当時)から「一度謝れば韓国は二度と従軍慰安婦のことは言わない」と説得され、「痛切な反省と心からのおわび」を明記したことを紹介。「国と国の関係で一度決着したものを蒸し返してはいけないし、蒸し返させてはいけない」と強調した。 (2012/10/10-21:32)

しかし「日本軍による軍法会議で裁かれた」という主張は、はっきり誤っている。
韓国以外で軍が強制的に慰安婦を集めた事例がスマラン事件のことなら、捕虜から訴えを受けて慰安所を閉鎖しただけで、関係者は処罰されなかった。裁かれたのは戦後の戦犯裁判でのこと。
慰安婦にされた女性たち-オランダ 慰安婦問題とアジア女性基金

ジャカルタの軍司令部の命令で、慰安所は営業開始2ヶ月で閉鎖され、女性たちは解放されました。しかし、慰安所のいくつかはその後混血女性を使って同じ場所で再開されました。

 戦後、収容所のオランダ人を強制的に慰安所に連行していった日本軍将校たちはBC級戦犯裁判で裁かれました。1948年2月14日バタビヤ臨時軍法会議はスマラン慰安婦事件の被告13人のうち、岡田陸軍少佐に対して死刑、11人に最高20年、最低2年の禁固刑を言い渡しました。

インドネシアや中国で軍が拉致したと見られる事件では、裁かれてすらいない。
慰安婦にされた女性たち-インドネシア デジタル記念館慰安婦問題とアジア女性基金

倉沢氏の研究によれば、インドネシアでも、部隊が独自に女性を強制的に連行して、自分たちの駐屯地に慰安所のようなものをつくる例が見られました。西ジャワ地区に多くみられると報告されています。

自国政府がかかわった歴史研究でも認めている加害性を否定しながら、蒸し返していると批判するなど、厚顔無恥もはなはだしい。


ちなみに高村副総裁は日中友好議員連盟の会長でもあり、安倍晋三総裁も副総裁起用理由としてあげていた*1。残念ながら、問題視されるべき「海外へのメッセージ」を発信する結果となったわけだが。
ついでに弁護士でもある。統一協会信者が脱会のため精神病院に入院させられた時*2、人身保護請求をして開放させたこと等があり、外務大臣だった1998年の参議院でも立場を問われていた。
参議院会議録情報 第143回国会 法務委員会 第3号

 それに関連しまして、実は高村外務大臣、この方はかつて統一協会代理人だったわけですね。裁判の記録などにも載っているわけです。それから、一九八九年の資産公開では、統一協会霊感商法の元締めであるハッピーワールドという会社、ここから時価三百八十万円のセドリックを提供されているというような、これは相当に深い関係だと思うんです。こういう方が今、日本と北朝鮮の問題のさなかで外務大臣をやっているということを私は大変危惧するわけです。
 ですから、高村さんは現在とこれまでの統一協会との関係、具体的なものを全部公開すべきではないのかなというふうに思うんです。もし公開できないとしたら、これは外務大臣としては大変不適任でありますから、これは罷免すべきではないかと思います。

なるほど安倍総裁との繋がりは鮮明といえるだろう。なお、現職議員へ統一協会との関係を問う1999年の雑誌アンケートに対しては、高村議員は弁護士として過去に関係があっただけで現在は無関係と回答していたらしい*3

*1:http://mainichi.jp/select/news/20120929k0000m010098000c.html

*2:当時の拘束が問題をふくんでいたことは否定しにくいとも思うが。

*3:http://www.asahi-net.or.jp/~am6k-kzhr/wgendai.htm