法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『新SOS大東京探検隊』

大友克洋『SOS大東京探検隊』を原作として、2006年に公開された後日談。東京の地下に隠された宝を探索する子供達の冒険を、40分の中編で描く。
映画『スチームボーイ2』の企画が中止に終わった後、代替的に制作されたらしい。
http://animeanime.jp/feature/interview/shinsos1.html
共通するスタッフと会社で制作されたOVA『FREEDOM』シリーズの、技術パイロット的な作品という位置づけも可能か。


背景だけでなくキャラクターも3DCGで描画されているが、効果を上げている場面とそうでない場面の差が大きい。大友原案らしい絵柄を3DCGで再現していることは面白いが、キャラクターを回り込んだりする3DCGならではのカットがほとんど存在しない。3DCGが効果的に活用されているのは、舞台となる立体的な地下、大量のネズミ*1、最後に登場する旧軍の「宝」くらい。作品単独で評価すると、キャラクターは手描きで統一するべきだったと思う。
ただ、見所がないわけでもない。かわいらしさの欠片もない少女キャラクターなどは面白いし、地下に時代遅れの人々が住み着いているという情景は手堅くこなし、ところどころで橋本敬史らの手描きエフェクト作画も楽しめ*2、終盤では派手なアクションも展開される。フィギュア趣味にのめりこんで妻に離婚される父親が、当時のサンライズ作品そのままのフィギュアを飾っているような遊びもあった。
全体として、娯楽小品としてはまとまっている。逆にいうと、あまり新味がない。『劇画オバQ』のような成長の痛みも描かれているが、主な視点は子供側なので、文芸性を強く感じるほど踏みこんではいない。尺が短いこともあり、あまり期待せず手軽に見るべき作品か。

*1:オーディオコメンタリーによるとGONZO制作だそうで、かなり良い出来。

*2:火炎瓶描写の、CG炎から手描き爆発への移行が自然で、オーディオコメンタリーで語られるまで気づかなかった。