法華狼の日記

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原水禁について知らず、坂本龍一氏が北朝鮮支援団体に寄付したと書く「痛いテレビ」が痛い

坂本龍一氏が脱原発イベントにおいて北朝鮮支援団体へ寄付したという情報が流布されているのだが。
痛いテレビ : 坂本龍一が脱原発イベントの収益を北朝鮮支援団体に寄付か 「NO NUKES 2012」

原発反対を訴えながら、再稼働派である日産のCMに出演する坂本龍一さん。
今度は脱原発の音楽イベント「NO NUKES 2012」の収益金を北朝鮮支援団体に寄付したとのこと。

何かと思えば、「原水爆禁止日本国民会議」いわゆる原水禁に対して、「どうみても北朝鮮の支援団体にしか見えませんが・・。」と評しただけの、明らかにくわしく知らない人間の1ツイートが、重要な情報源としてあつかわれていた。


日産のCM出演については、皮肉という表現を用いることは自由な場面であると思う。もちろん、CM出演が企業への全面的な賛同と同一ではないという反論もありうるが、潔癖な価値観から批判するという意見はあっていい。坂本氏に限らず、CM出演者には、それぞれの立場で相応の責任を感じてほしい。
しかし、原水禁北朝鮮核開発を明確に批判している。公式サイトでも、北朝鮮とイランの2国だけ独立して核開発疑惑国ページに掲載されている。「参考」として外務省のページへ複数リンクが張られていることも興味深い。
核開発疑惑国
「痛いテレビ」のいう「反原発音楽イベントの収益が核開発を続ける北朝鮮を支援する団体に寄付されていたとしたら、とてもグロテスクで素敵ですね」といった評価は、少なくとも現在の原水禁についていえば的外れもはなはだしい。当然、それを根拠にした坂本批判も取り下げるべきだろう。


他に、「痛いテレビ」独自の情報として、平和フォーラムサイトの日朝国交正常化連絡会総会ページが示されてはいる。しかし、これもよく読めば印象が違ってくる。
日朝国交正常化連絡会総会・記念講演会報告|集会等の報告|フォーラム平和・人権・環境

訪朝団派遣の一方で、この間どの地域でも取り組まれてきたのが、やはり朝鮮高校無償化除外に対する抗議と朝鮮学校との交流の運動でした。

目下の問題として取り上げられているのは、朝鮮学校無償化除外について。無償化除外を批判することが北朝鮮支援団体の証拠というなら、差別政策をやめるようにと日本へ勧告を出した国連なども北朝鮮支援団体といえるだろう。
北朝鮮に訪問した小倉紀蔵教授による経験談など、現在の北朝鮮の思想に矛盾があるのではという批判を読み取れる記述もある。

主体思想では人民大衆の要求の通りにしていくことが重視されており、実際に人民からはいろいろな要求があるはずだが、一方で唯一思想体系という方針を持っていることに矛盾はないのか、どのように整合性があるのか、といった質問を小倉さんは投げかけたそうです。これに対し社会科学院の研究者たちは、人民の要求は百人百様であるのが当然だが、共通しているのは自由ということだ、これは他者に拘束されないし、他者を拘束しないという自由であるとまとめることができるが、朝鮮ではこうした自由を「自主」と呼んで重視し、均衡のとれた自由の概念を見出した、といった説明をしたそうです。

日朝国交正常化が「支援」にあたるかどうかは価値観によるかもしれないが、相手国を批判する立場でも国交正常化を推進できることは留意されるべきだろう。国交を断絶するということは、相手国に何らかの問題があった時、解決に導くための一手段を放棄することともいえる。
毅然とした態度しか外交カードを持たない政治家の能力 - 法華狼の日記


そもそも『Will』に寄稿しているような山際澄夫氏の1ツイートを情報源にしている時点で、まともに「痛いテレビ」を相手にするべきではないのかもしれない。
ツイッターを見ると、最近は下記のようなツイートばかりRTしている*1

山際氏自身も、先日の『朝まで生テレビ』に対して、下記のような主張をツイートしていた。

最も醜悪なツイートの一つでは、2ちゃんねるまとめブログを情報源にして、性産業従事者の権利要求を慰安婦制度被害者の権利抑圧に利用しようとまでしていた。

CMに出演するだけで坂本龍一氏を皮肉ることができるのであれば、そして様々な問題を広くあつかっている団体の異なる活動を批判材料にできるならば、このような山際氏を情報源として依拠した「痛いテレビ」はどうなのだろうか。

*1:最初のツイートのデマについては、ちょうど最近に言及した。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120721/1342914350