法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダムAGE』第37話 ヴェイガンの世界

日野社長脚本回で、何気なく『機動戦士ガンダムAGE』で初めてMS戦闘が存在しない回。主人公が捕虜となり、街を歩きまわって敵地の事情を肌で知っていくという、重要かつ良い意味で視野を広げる展開。
しかし、ウイルスが蔓延していることが地球へ侵攻する動機として語られるとか、地球側に選択肢を与えてきたという釈明とか、ヴェイガンに同情をひかせようとする描写は、どう考えても過去の描写とかみあっていない。


相手に選択肢を与えているというなら、そう意図を伝達すればいい。侵攻という選択肢を選ばなくても、被害者として名乗り出ればいい。少なくとも、それらの選択肢を試して失敗した過去があると説明する描写は必要だ。
そして、そういう地球側へ意思を伝える動機がヴェイガンにあったなら、そもそもフリット編でヴェイガンが太陽系外から来た生物と誤認識されたわけがない。いくら連邦上層部が情報操作していたとしても、フリットのように最前線に出ていた立場に対しては、いくらでもヴェイガンが自己主張できたはずだ。それに「魔少年」のように、フリット編の時点でも、ヴェイガン側の重要人物は地球側社会に深く入り込めていた。
仮に、指導者が変わって方針も変更されたという経緯があるなら、まだいいのだが。過去の対立によって今さら侵攻をやめられないし、地球側に接触することもできないという状況が語られたなら、主人公が世代交代するという企画の意味も出たかもしれない。しかしヴェイガン側の指導者は同一とわざわざ設定しているため、この説明も使えない。


ヴェイガンの動機と行動が、設定のレベルで全く噛み合っていない。せめて『機動戦艦ナデシコ』の木星蜥蜴のように、あくまで復讐心から動いていて、コミュニケーションをとる動機が相手になかったとすれば、まだ納得はできた。
ここまで敵の事情を隠しておきながら、過去作品にもあった*1ような凡庸な描写を並べただけという安易さが、ちょっと残念。

*1:逆にいえば、こういう描写を初めて見る低年齢層視聴者の感想に興味がわいたかな。