法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ジャイ子の漫画にお邪魔します/お天気ボックス

アニメオリジナルストーリーの前半と、原作をふくらました後半と。


前半はサブタイトル通り、ジャイ子がコンテストに送る漫画が気になったジャイアンとともに、ドラえもん達が作中作へ入り込む。
基本モノクロの古臭い少女漫画の世界に、いつものドラえもん達が紛れ込んでいる映像が、なかなかシュールな光景で楽しい。ちゃんとトーンやカケアミのような漫画技術が再現されているので、まるで新房昭之監督作品のように異化効果がすさまじかった。
入り込む漫画作品がベタな展開ゆえ、ジャイアンが傍若無人に変更した展開が、作中でジャイ子が評するように「けっこう面白い」のもポイント。醜い野蛮の強さに美しい貴婦人が惹かれるのは、ラブストーリーの定石だ。
一つだけ、入り込む漫画が明らかに過去作品の模倣ということは気にかかった。先々週にアニメ化されたエピソードだが、原作ではパロディ漫画であるがゆえに、ジャイ子がしょせん自分は劣化コピーを作っただけと反省するオチに繋がっていた*1。その先々週でパロディ漫画をアニメで使わないのは今回のためかと思い、原作のテーマを崩したかと不安になったが、さにあらず。ジャイアン達が入ったのは古い作品で、コンテストには別作品を出したというオチに繋がった。うまく原作のテーマを尊重したオチで、満足。


後半は、天気をあやつる秘密道具が登場。天気予報が外れてハイキングに行けるかどうか、のび太達が賭けをする。
まず、のび太が晴れを確信するきっかけとして、ママの祖父が天気予想の名人だったというオリジナル設定が、理科っぽくて良かったと思う。祖父の良い思い出そのものは肯定した上で、その予想方法を忘れているところも、人間らしいリアルさがあった。
そしてオチだが、原作では異なる天気改変道具「雲とりバケツ」が唐突に登場して解決するという、安易といえば安易な展開だった。一応、ドラえもんが悲惨な状況になるというオチはあったが。
そこを今回のアニメ版では、雲とりバケツの蓋が開いてしまう場所を屋外にして、再び雨が降り出すという新展開。そこで雲とりバケツの性能には限界があると描写。その上で、改変カードで奇妙な天候が発生するという原作描写を延長し、天気がめまぐるしく転換する超展開。
コント番組を手がけていた清水東脚本の良さなのかもしれないし、カット割りの呼吸も良くて笑えた。演出的には、てるてる坊主の一つが太陽マークという遊びなど、細かい笑いもちりばめられていて楽しかった。