法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

生活保護の不正受給率は脅威

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120527/trd12052701310003-n1.htm

急増している生活保護費の不正受給防止に向け、厚生労働省全国銀行協会全銀協)が、生活保護の申請者や扶養義務者の収入や資産を正確に把握できるよう、銀行など金融機関の「本店一括照会方式」を実施することで、近く合意する見通しであることが26日、分かった。合意後は、生活保護の認定を行う全国の社会福祉事務所と金融機関の双方が準備を進め、早ければ年内に実施する方針だ。

こういう無駄になるとしか思えない手間と金はかけるのか。
記事の二枚目に、これまで導入してこなかった理由と、「急増している」という不正受給率の数字が書いてあるのだが。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120527/trd12052701310003-n2.htm

 当初、「業務が増える」ことなどを理由に難色を示していた都市銀行も、不正受給対策を求める世論の高まりなどを意識して方針を転換。全銀協は「早ければ今月末にも実施を確定する予定で、現在最終調整している」という。

 厚労省によると、生活保護受給者は平成24年2月現在、209万7401人に上り、22年度に支給した額は3兆3296億円にも上る。一方、不正受給は判明しただけでも、17年度が1万2535件(約71億9278万円)だったのに対し、21年度は1万9726件(約102億1470万円)に急増。防止策が課題となっている。

年度は異なるが、3兆3296億と102億では金額が2桁も異なる。率にして、たったの0.3%だ。
あくまで「不正受給は判明しただけ」の件数である。これは単に計上されていない暗数があるというだけではない。締め付ければ容易に伸びる数字ということだ。実際には収入等の申告漏れなども不正受給として計上されている。そうした中から悪質でないと判断された場合は返還して処理されるように機構そのものが作られているほどだ。
この不正受給率から、「申請者や扶養義務者が申請者の居住自治体から離れた金融機関の支店に口座を作るなどして、保護費を不正受給するケース」がいったいどれだけ存在するというのか。「業務が増える」という手間を全体でかけても、見合うだけの「合理化」ができるとは思えない*1


そもそも、産経記事は支給額や受給者の増減を書いていない。
生活保護の世帯数・人数、年推移(2011年)
一例として、上記資料の受給者数から、17年度は1475838人、21年度は1763572人という数字を引いて、不正受給件数をそれぞれ割ってみた。率にして0.8%が1.1%になった上昇率を、はたして「急増」といえるのだろうか。
くり返すが、「不正受給は判明しただけ」の件数である。これは単に計上されていない暗数があるというだけではない。締め付ければ容易に伸びる数字ということだ。実際には収入等の申告漏れなども不正受給として計上されており、そうした中から悪質でないと判断された場合は返還して処理されるように機構そのものが作られている。
もちろん人数と件数を同じにそろえることには異論があるかもしれないが、一つの情報として提示しておこう。

*1:形式的には合理化が目的ではないという主張も成り立つが、ならば社会保障の合理化に役立つという主張は取り下げなければならなくなる。