法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『男たちの戦場』

2006年のオーストラリア映画で、原題は『KOKODA』。
第二次世界大戦ニューギニアのココダ街道で日本軍と戦ったオーストラリア民兵を描く。GYAO!で無料配信していたので視聴してみた。


戦場の描写は、低予算を逆手にとって、先の見通せないジャングルを軽装備少人数で移動する困難と恐怖が存分に描かれている。
泥だらけの道に埋まったり、尻を出して排泄したり、実に飯がまずそうだったり、雨がうっとうしそうだったり、オーストラリア軍も現地人を戦争に協力させていたり、まさに戦争や戦闘ではなく戦場のドラマといったところ。
日本兵は顔が逆光で黒く塗りつぶされたり、木々を透かし見るように体の一部しか映らなかったりして、主人公の理解がおよばない敵となる。そうして戦場の恐怖そのものが立ち現れる。下手をすると敵を非人間として描くだけに終わりそうなところ、大局を全く知らない民兵の視点で描くことで戦場そのものの不条理さが浮かび上がった。
おまけに、描写が少ないので日本人から見て違和感を持つ場面も抑えられていた。日本刀による捕虜殺害が、据え物切りというより架刑しての斬殺に見えたくらいか。


しかしながら、少人数の行軍なのに登場人物の区別がつきにくいことは難。もっとわかりやすいキャラクターに当てはめた方が、次々に脱落していく恐怖を描けただろう。
何より問題は、戦場の苦悩がしっかり描かれていた分、結末でオーストラリア軍を賞賛する字幕の唐突さがひどすぎる。『ブラックホークダウン』の結末でも思ったが、ここまで戦争の愚かしさを描いておきながら戦う決意を賞賛しなければならないのか、と悪い意味で驚いた。その字幕において、映画で描かれた戦いが大局から見ても意味が薄かったと示される矛盾も、失敗した作戦を題材にして愛国心を称揚した『ブラックホークダウン』と同じで驚いた。
はっきりいって、最後の字幕はない方が良かった。