法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

光市母子殺害事件の事実関係は、あらゆる領域で忘却され続けている

下記エントリのコメント欄を見て、あぜんとしてしまった。
2012-02-21*1

Taka 2012/02/22 09:05
一審、二審で、弁護団が事実関係で争わなかったのは、
結局、弁護側も、事実関係は、どうでも
良かったんでしょ?
死刑さえ、回避できれば。
12年も、裁判やって、事実関係が、
あきらかにならないとか、なんなの?
800年くらい、裁判やったら、
事実関係は、明らかになんの?

一審二審と、最高裁差し戻し以降の裁判とで弁護人が交代したことも忘れられているとは。ひきつぎのため接見した被告人の証言に安田好弘弁護士が驚き、組み立て直した弁護側主張が、懲戒請求騒動の一因であったというのに。
結果として、騒動が起きていた当時は、初期の弁護人と現在の弁護人の齟齬を見いだして、どちらか一方が必ず間違っているかのような批判意見も存在した。もちろんそのような単純な対立関係で考えることも誤りである。
弁護団を構成する各弁護士で立場や意見が異なることや、初期の弁護人との複雑な関係は『光市事件 弁護団は何を立証したのか』にくわしい。
『光市事件 弁護団は何を立証したのか』を読む - 法華狼の日記


そもそも、懲戒請求がされた当事者の主張すら間違って受け止められ続けていた。弁護団の作成したQ&A記事を紹介しておこう。
光市事件Q&A(弁護団への疑問に答える) - 光市事件懲戒請求扇動問題 弁護団広報ページ - Seesaa Wiki(ウィキ)
注意しておくが、これは弁護団の主張が正しいという紹介ではない。主張の正誤とは別に、弁護団が主張している内容そのものの紹介だ。まさかと思われるかもしれないが、懲戒請求騒動時には、弁護団が主張していないことをもって弁護団を批判する流れが大勢をしめていた。
実際、過去にやりとりした相手には、事件に対する自身の「感情」が形成された理由にWikipediaを持ち出してきた者さえいた*2
ウィキペディア脳の恐怖 - 法華狼の日記
上記エントリでWikipediaに記述された当事者の主張と、実際の当事者との主張は異なっていると個別具体的に批判していったのが、まともな返答はなされなかった。
ウィキペディア脳の恐怖・続 - 法華狼の日記
上記エントリで私が批判したように、弁護団の主観そのものを誤解しているという批判に「書き手の主観たっぷり」と返答し、「2ちゃんねると比べて、そのシステムは極めて公平かつ中立的」とWikipediaと評価するような顛末だった。
むろんWikipediaを根拠に懲戒請求の動機を肯定するような態度は、上記エントリで批判した個人にとどまるものではなかった。そもそも行われた懲戒請求そのものが誤解に満ちた事由を並べていたのだから。そして、最初に紹介したコメントを見ると、今でも大勢は変わらないのだろう。

*1:なお、エントリを書いているkingworld氏と私とでは、事件に対する見解が一致しているとは限らない。

*2:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20090128/1233184837のように、批判されると「キチガイ」と返答して応答は拒絶する人物なので、ことさらIDコールやリプライは送らないが。