法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ラストエグザイル-銀翼のファム-』#15 Triangulation

成功した226事件


いや、これは1年間を通して描く4クールアニメで見たかったな。
たとえば今回よせあつめの軍隊が会議を行い、復讐心にかられて冷静さを欠いていく様子が描かれたのだが、主人公ファムの言葉で水を差されて収束する。話数に余裕があれば、よせあつめゆえの弱さをつかれて敗北する展開と、それからの再起を描くようなうねりあるシリーズ構成にもできただろう。


むろん現状でも主人公側の稚拙さや、敵と同じように他者を抑圧していたことが描かれており、密度の濃い展開と賞賛することはできる。
軍事的に膨張していた敵の大国が、皇帝すら雑穀の粥を主食としている描写など、まさに大日本帝国のような貧しい軍事独裁国家を思わせる。前々回に交流した相手から、仇敵の妹としてミリアが避けられる悲しみを描いているから、会議の場でミリアが姉を思って苦しむ様子が台詞で説明せずとも伝わってくる。姉の裏切った心理的な一因や、敵指導者のかかえている苦しみをミリア達が知っていく描写もいい。そうして物語の主軸がミリアに移っていく展開の結末で、ミリアの翼になるとファムが立候補。ここで作品タイトルに繋がった。
だが、こう完成度が高く、多重に葛藤がおりこまれている世界観ならばこそ、もっと長い時をかけて行く末を見ていきたい思いをもった。


戦闘がなかったこともあってか、今回はキャラクター作画も堅調。次回は総集編だが、なるほど前作での出来事を説明する内容ならば必要だろう。