法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

産経新聞の歴史教科書検定記事を紹介

記事タイトルが全てを表わしている内容。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110330/edc11033021330011-n1.htm
南京事件」が全社に記述されたこと、「強制連行」という単語が消えつつ記述内容に残っていること、集団自決が日本軍によって追い込まれたものということ、慰安婦や慰安施設という言葉が消えつつ教える根拠となる記述があること、といったことを問題視している。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110330/edc11033021330011-n2.htm

 慰安婦については、はっきり記述している教科書はなくなり、前回検定では残っていた「慰安施設」といった言葉も消えた。
 しかし、一部に「動員は女性にもおよび、戦地で働かされた人もいた」(同)とし、授業で「従軍慰安婦」の存在を教える根拠になるような記述があった。

そこまで後退させてなお文句をつけるという神経が信じられない。


他国との関係記述にも細かな文句をつける。

 明治維新後の、日朝修好条規は、多くの教科書が日本が朝鮮側に「不平等な条項を押しつけた」などと記述するが、欧米列強の脅威に対抗するため、朝鮮の開国・近代化を求めようとした当時の事情についての説明はほとんどなかった。

少し目新しいのが、他国における革命を肯定する記述全般への批判。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110330/edc11033021330011-n3.htm

 ソ連崩壊から20年以上経過しながら、いまだに労働者ら社会的弱者による革命が歴史を変えるという共産主義階級闘争史観から脱却できていない記述も目立った。

 フランス革命には、王や貴族だけではなく多くの民衆も虐殺し、恐怖政治やナポレオンの独裁政治を生んだ負の側面が強いが、「古い身分社会を打ちこわし、市民を中心とした自由で平等な新しい社会への道を開いた」(教育出版)、「世界じゅうの抑圧に苦しむ人々に希望をあたえた」(東京書籍)など称賛が目立つ。

 ロシア革命も「女性と労働者などが、パンと平和を求めて立ち上がった」(教育出版)などと肯定的に記述。共産主義体制の崩壊について、詳しく原因を分析する記述はなかった。

日朝修好条規を擁護しようとした直後とは思えない筆致。革命が駄目なら日韓併合はもっと駄目だろう。

 自由社育鵬社は、共産主義とドイツなどのファシズムを、全体主義として、批判的に取り上げた。公民では、フランス革命を批判した保守主義の思想家、バークを取り上げたり、「神の見えざる手」を説いたアダム・スミスが資本主義での道徳の重要性を指摘したことを記述したりした。

スミスのいう道徳って、簡単にいうと人間が他者を意識して自制することで、国家権力が法律で制約せずとも正義がなされるという自然法学が根底にあるはず。
他者を意識するどころか具体的な他者からの批判すら拒絶し、全力で自制を妨げている記事でスミスの道徳を肯定的にとりあげるのは、失笑されることを期待しているのだろうか。