法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『UN-GO』第2話 無情のうた 坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖“ああ無情”」より

輪るピングドラム』への返歌のごとき作り。いわば「きっと何ものにもなれない私たちのうた」といったところ。
ミステリのトリックとしては単純だが、一話完結で見事にまとめたものだと思う。戦時下に戦意高揚のため活躍した歌手が戦後に退いた真相、そして現代に起こされた殺人事件の動機は腑に落ちるものだった。ミステリとは別の、戦後に発表した坂口安吾のエッセイに近い味わいもある。
アニメ化に際して、史実上の偉人が先に提示した嘘の推理が真実として扱われる趣向も面白い。原作では、史実上の偉人が誤った推理を披露して、名探偵が真の推理を発表するという趣向で、ミステリとしての密度は高いもののストーリーに味気なさを生む要因であった。アニメ版の順序だと、名探偵の特権性を権力者が剥奪する葛藤が生まれつつ、後期クイーン問題のような現代ミステリの論点に対する一回答としても成り立っている。