法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『輪るピングドラム』9th station 氷の世界

これまで内面が描かれていなかった妹の視点から、少女もまた「何者にもなれない」苦しみをかかえていたことが明かされる。「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」という台詞は、すでに何者かになれそうでなれなかった者の口を借りて語られていたのだ。
何者かになれた少女達のすこやかさが*1、誰にも否定できないような幼い少女のあやまちを際立たせる。そして目覚めた妹が回想の内容を忘れ、いったんありきたりな肩透かしを見せたかと思うと、いつものように少女をけっして責めようとしない歌が流れ、それがまた悔恨を呼び起こす。


回想が始まってからは、どのような背景事情が見せられるかは予想通りの一本道。まっすぐに力強く見せていく演出の力がためされる。
このような回だからこそ、武内宣之*2がコンテ演出作画監督にとどまらず一人で原画*3まで手がける意味がある。
個人的には人体を煽るカットでの力強い描線が印象的だった。

*1:妹の主観による美化という雰囲気もあるが。特に、最も痛かったであろう学校から去る場面では、その経緯が描写されていない。

*2:近年はシャフト制作作品での登板が多いが、『少女革命ウテナ』でもメインのアニメーターとして参加している。

*3:ただし第二原画に少しまいている。