法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『TIGER & BUNNY』#20 Full of courtesy,full of craft.(口に密あり、腹に剣あり)

黒幕を信用し続けた主人公が意図せず状況を抜け出す緊張感がある前半と、黒幕の計略にはまって親しい仲間をふくめた社会全てが敵となる後半。サスペンスの王道ふたつを同時に楽しめる物語の密度はなかなかだった。複数の場所を転々と描き、手がかりにふれながらも真実をとらえられない主人公が、良い意味で見ていてもどかしい。ただ主人公が愚かなのではなく、自然な行動で逃げ場をなくす過程がていねいに描かれている。ヒーローのふりをする熱狂的なファンがいる過去回の描写をクライマックスに持ってきたところも好感が持てた。
主人公がひさしぶりにヒーローとして活躍し、しかも最後のおいしいところを持っていきながら、その背後で黒幕の隠蔽工作が行われていたという皮肉な構図もいい。


マーべリックのNEXT能力は、どうやら対象が薬等で意識を弱めていないと効果がないことが明示された。情報隠蔽のために殺人を犯した前回の描写にも改めて納得がいく。
ただ、マーべリックの命じるままに拉致等を行う配下がいる描写は、あまり好みではない。念のため、設定としておかしいという話ではない。過去にはやらせ番組を行っていたし、記憶改竄能力もあるので、配下がいても基本設定や過去描写と整合性はある。好みでないのは、情報漏洩を恐れているのに悪事の情報を共有する実行犯が複数いるのは、あまり黒幕として知的と感じられないためだ。黒幕が個人で秘密をかかえたまま、自身の能力と立場を活用して隠蔽工作を成功してみせるくらいの、悪人としての有能さを見せてほしかった。
物語の流れを見ても、嘘の連絡を行えば拉致することや偽装殺人することくらい不可能ではないと感じる。配下が多ければ、ここまで黒幕が追いつめられることもなかっただろうという気分もある。


作画は他のヒーローこそ粗い場面もあったが、主人公の芝居はていねいかつよく動いていて、要点は押さえていた。
タイガーの腕が巨大化する無駄ギミックを、落下時の衝撃吸収に用いた演出も地味に面白い。