法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『21エモン』#3 あっと驚くゴンスケ! 不思議な客タイロック?/#5ハッピーレポート! 超人スカンレーの伝説秘話

GYAOで改めて見ているが、記憶以上に面白い。高倉佳彦がキャラクターデザインで荒川真嗣がメカデザインと、映像面のスタッフも豪華。1968年に開始した原作を、1991年にアニメ化するため、現代的に整ったラインに再構成している*1
同じ原恵一監督作品でも、短編を30分番組に引き延ばして黄金期邦画のように時の流れをゆるめた『エスパー魔美』や、単純に30分2話構成にした『チンプイ』と異なり、原作の各話に分散する設定や描写をよりあわせて30分作品に仕上げている。
基本的に奇妙な客がホテルに泊まって引き起こす珍騒動をシンプルに描いた原作の前半と比べ、構成が複雑かつ緊密になっている。藤子F作品に珍しく、次回へ引く形式を多用して連載をつないでいる原作が構成に反映されているのかもしれない。


特に、第3話では異なる意味で困った客を意図せず泊めてしまう「宇宙怪獣タイロッグ」と「銀河の間へごあんない」を同時進行させ、いわゆる「グランドホテル形式」で物語を形作っている。
タイロックによって他の客が全て追い出され、必然的に残ったミリオネア星人のチップをもらおうとボーイ同士で争いが起こる展開は、ただの競争意識にすぎなかった原作以上に説得力があった。


第5話は、原作の時点でもグランドホテル形式に近い。その代わりに、21エモンの心を宇宙探検とホテル経営をゆり動かすため、前振りもなく泊まりにきた探検家を、同じ学校から宇宙パイロットとなった先輩として描写。同じ学校の先輩という説得力を出すため、課外授業描写を他の回から引いてきてニアミスさせている。
性格的には豪放磊落だっただけのゲストキャラクターを、探検の苦しみも喜びも知りつつ後進へ期待をかける、内面ある人物として再構成した。わびたホテルを求めるアニメオリジナルの台詞など、つづれ屋に泊まる前振りであると同時に、性格を表わす言葉でもある。
そうして内面を得たスカンレーは、今後も何度か登場することとなる。アニメ終盤での大活躍が懐かしい。

*1:ルナのデザインだけは原作が好みかな。