法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『TIGER & BUNNY』#16 Truth lies at the bottom of a well.(真実は井戸の中にある)

レジェンドに隠されていた衝撃の末路。
憧れの対象が正義を失っていたという真相は、特撮ヒーローでは極まれにある展開だが、アメコミ系ヒーローでは珍しい気がする。修行の師と対決する映画『バットマン ビギンズ』が近いだろうか。
それでも、すでに亡くなったヒーローがそうだったと明かされることは滅多にない。憧れの対象が亡くなった後では、正義を回復することも、戦って正面から乗り越えることもできない。長く物語を重ねないと難しい、連続TVアニメならではの展開だと思う。


そして物語はヒーローの光と影を、レジェンドという伝説に象徴させて進んでいく。様々なキャラクターが相互に影響しあって対比されながら、適度に象徴化されていて見ていて混乱せずに主題が伝わってくる。
まず、虚像としてのレジェンドしか知らなかった虎徹は、意図せずレジェンドと同じ道をたどりつつあった。キングオブヒーローという虚像を守りたかったレジェンドと、レジェンドの虚像に憧れてヒーローという立場を守りたかった虎徹。周囲に与える印象はまだ正反対だが、仲間にうまく力を使わせてヒーローらしくふるまう構図は全く同じだ。家庭を維持できていなかったが、擬似家族を形成して現在をしのいでいるところも似ており、それが次回の展開に繋がるのだろう。
一方でレジェンドの末路を知っていたルナティックは、だからこそ仕事としてのヒーローではなく、無償で自身の正義を貫くヒーローとしてふるまう。
『TIGER & BUNNY』#09 Spare the rod and spoil the child.(かわいい子には旅をさせよ) - 法華狼の日記

ルナティックもまた正体を隠して「正義」を行うヒーローだ。変身ヒーローの古典像に近い。
アンチヒーローであるためスポンサーロゴを入れられないという制約が、逆に、社会とつながらず個人の正義をつらぬくキャラクター性を支えるわけか、なるほど。


コンテ演出は古田丈司サンライズ作品では『ケロロ軍曹』や『犬夜叉 完結編』において活躍していた、比較的に新人か。階層都市という設定をいかしたということだろうが、アクションの場がロープウェーだったり、街頭テレビのバーナビーに見下ろされるゴミ捨て場の虎徹という高低差が結末で印象深かったり、全般的に良かった。
作画も要所に力を入れるだけでなく、2クール目に入ってから全体の水準を高めるという意味でも良作画が楽しめるようになってきた。
不満が残ったのは、一般人がふるう鞭とのアクションで、スローモー演出がただもたついた動きに見えたことくらい。虎徹と動きの質を変えるか、撮影でスローモー風な映像にしてほしかったかな。