法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『GOSICK―ゴシック―』雑多な感想

そこは十数年の時間を飛ばして、第二次世界大戦にするべきだろうと最終回を見ながら思った。そして大人になった久城と頭髪が退色したヴィクトリカが廃墟の日本を歩んでいって物語を結ぶ、という展開に繋いでほしかった。どうせラストシーンは心象風景なのだし。
もともと架空の欧州小国を主な舞台としていた作品だが、第一次世界大戦の次の新たな大戦が作中で予告されていた。ここまで大規模に身近な歴史を改変されると、虚構性が急に強くなりすぎて違和感がある。
まあ、それぞれのキャラクターへ最終回に落とし前をつけさせ、キャラクターアニメとしてはきちんと終わったとは思うが。


作品全体としては、BONES制作らしく作画は高水準で、格闘戦や建造物崩落など見せ場が多かった。背景美術も隙がなく、欧州情緒をよく描き出せていたと思う。
しかしミステリ要素は、もともと推理がライトな原作よりさらに薄くなっていたのが残念。謎の描写が淡々としているので、どんでん返しで驚くようなこともできなかった。
『GOSICK -ゴシック-』/『GOSICK II -ゴシック・その罪は名もなき-』/『GOSICK III -ゴシック・青い薔薇の下で-』/『GOSICK IV -ゴシック・愚者を代弁せよ-』/『GOSICK V -ゴシック・ベルゼブブの頭蓋-』/『GOSICK VI -ゴシック・仮面舞踏会の夜-』桜庭一樹著 - 法華狼の日記

GOSICK III』は現在も語られる都市伝説を調理せず物語化しており、真相へ見当をつけやすいし、関係業界からの懸念も出そうだ。『GOSICK IV』も現在に残る問題がトリックと密接に関わっており、時代ミステリらしい寓話性高い語り口でないとリアリティが完全に消えそうな上、安易に差別問題を娯楽化したという批判もありうるだろう。外見に特徴のある架空民族が主人公の背景として登場したり、精神の病をわずらったらしき人も出てくる。

放送開始前に上記のような懸念も書いていたのだが、良くも悪くも頓着せずにそのまま映像化していた。『GOSICK IV』のメイントリックは、肝心の過去回想場面が明るすぎて、映像としての説得力を欠いていたところも問題だった。
逆に記述方式で面白い趣向を見せていた『GOSICK VI』は、列車内の殺人劇とアクションという要素だけを残し、単純な内容へ整理。本来の2クールより2話少ない全24話だったため1話で長編原作分を終わらせなければならなかったのかもしれないが、シリーズ構成の配分としては間違っていない。シリーズ根幹設定とのオリジナルな関連性も好印象。