法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『リザレクション』

2002年の韓国映画。『マトリックス』に影響された作品群の一つで、『マッチ売りの少女』をモチーフとしたSFアクション作品。
現実に不満をかかえた韓国のゲームオタクを主人公としている。作中で『キューティーハニー』と思われるイラストが出てきたり、賞金が出るプロゲーマーの対戦で多数の観客が熱狂していたり、当時の韓国オタク社会を知る参考として興味深くはあった。


個別のアクションは楽しめたが、SFとしては設定が粗すぎて、作品全体の感想は今一つ。
仮想現実を作り出す組織「システム」の姿は、一般的なパソコンがネットカフェ程度に並んでいるだけで、たぶん公開当時でもリアリティが感じられなかっただろう。普段は韓国映画の長所である俳優の肉体性もSFらしさを損ねるばかり。『マトリックス』や『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』のような無機物への偏愛がなく、スタイリッシュにはほど遠い。SFらしいディテールは最後のシステム突入場面しかなく、そのイメージさえ古臭い。
何よりも、登場人物が夢想する幻影と、SF設定のある幻影が映像として混在していて、現実と仮想現実の区別が不明瞭すぎる。終盤で現実と仮想現実がいりまじっていくという説明が出てくるが、序盤から映像的にいりまじっているので意味がない。仮想現実SFとして意味があるところは「GAME OVER」になった選択肢をやりなおすところだけで、これならば序盤のように登場人物の夢想で表現すればいいだけだ。


作り物めいた特撮から、どこかで見た記憶があると感じ始め、やがて大林宣彦作品を思い出した。個々のアクションが悪くないだけに、中途半端な特撮は物語から迫真性を奪うだけ。
この設定ならば、むしろ仮想現実という設定は全て切り捨てて、現実世界で命がけのゲームが行われるという設定にするべきだった。マッチ売りの少女がバグを起こして無差別銃撃を始める場面も、ショッキングさが増したはずだ。