法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』めいわくガリバー/ウワサののび太

Aパートは原作を忠実にアニメ化。ガリバーのように大活躍したいのび太が、小人の住む惑星に乗り込む。善意で協力しようと持ちかけるが、空回りするばかりか激しい迷惑をかけてしまう……
本来の『ガリヴァー旅行記』は異なる社会を通して、人間社会の愚かしさを風刺する作品だ。子供向けでは主人公が活躍するリリパット王国だけが紹介されることが多いが、それも本来は小人が戦争を起こした理由からして愚かしく、事実上ガリヴァーも迷惑がられて追い出されてしまう。
のび太は幼児向けの絵本でガリバーを知ったと描写されているので、考証を間違っているというわけではない。原作者は本来のリリパット王国に近い『超兵器ガ壱號』という短編作品を書いているくらいなので、膾炙しているガリバー像と本来のガリヴァーが異なることは承知していたはず。意識的に『ドラえもん』でガリヴァー像の原点を翻案してみせたのだろう。
巨大のび太が現在の地球に似た風景を歩きまわったり、巨人反対のデモ活動が行われるところが、原作通りとはいえ現代日本の作品らしくて楽しい。


Bパートはアニメオリジナルだが、のび太の能力が高評価されて外国のスパイに狙われる展開は「うつつまくら」に酷似している。次回も予告で見る限りは「オオカミ一家」と似た展開のようだし、しばらく原作をアレンジした回が続くのか。
語られる内容が真実でも低評価でも高評価でも、噂は困らされるものという風刺として読むこともできるだろう。しかし、どちらかといえば噂への反応が広がっていき、ダイナミックなアクションが展開される終盤の楽しさが全てをもっていった。ヘリコプターの追跡劇で背景動画を多用したり、最後に広がる噂を宇宙規模で描いたり、視覚的に楽しかった。絵コンテは西田健一。