法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『監察医七浦小夜子 〜法医学者の事件プロファイル〜 “死者の声から散弾銃連続殺人事件の謎を追う!DNAに隠された悲しき真実!ミステリー史上屈指の驚愕ラスト”』

金曜プレステージ枠で放映された2時間ドラマ。EDクレジットで原作は十数年前のマンガ『監察医SAYOKO』と知った。いくつか単行本が本棚の奥にあるはずだが、記憶ではドラマ化されたエピソードは未読。
菊川怜他の主演俳優が見せる演技はさておき、アクションも展開される映像が2時間ドラマとしてはがんばっていた。


しかし「ミステリー史上屈指の驚愕ラスト」という文句一つに興味を引かれて見たが、きっとこのサブタイトルをつけた人はミステリーをあまり知らないのだろう。たいした伏線もないので真犯人像を明かすが、DNA鑑定で誤った結果が出たのは法医学関係者による内部犯行という最もつまらない真相。
「これまでにない法医学の現場のリアリティーを追求した作品となっている」*1という公式サイトの紹介文句も虚しい。刺し傷から利き腕を判断するという初歩の初歩を、監察医の主人公が気づく場面が遅すぎて、いくら何でもリアリティに欠ける。そういう段取りはテンポ良く処理していくべきだろう。


一応、真犯人が殺人を犯すにいたった心理の過程は、そこそこ興味深いものではあった。その過程にかかった時間が、真犯人が法医学者になった説得力を担保しないでもない。しかし類例はいくつか思い浮かぶ。しかも最近では、そのためだけに子供を産んだというネタを、最初から明かした洋画『私の中のあなた』すら存在する。
あと、連続殺人の真相も最もありきたりなものだし、その真相が明かされる中盤で出てきた真相の一つも当時ですら手垢がつきすぎていたトラウマをプロファイリングというしょうもなさ。しかもその真相は、きちんとドラマの中で消化されないまま、終盤で真犯人が見せる情念に流されて忘れられるのであった……真面目な話、真犯人の行動を評価するには、中盤で明かされた真相も終盤で問い返さないといけないはずだよ。