法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ロボット・ボロよ、永遠に

映画『新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜』に合わせた特別編として、のび太がロボットを作り、育て、ともに生きるまでを描くアニメオリジナルストーリー。
映画の、ロボット組み立てから最大の衝撃場面まで、ノーカット映像も放映。


のび太が様々な存在を育て、その過程において自らも成長していく物語は、原作でもアニメでも複数ある。しかも、おおむね外れがない。まずまず今回も例外ではなかった。
成長話以外でも、冒頭でロボットが欲しいとアピールするのび太に対し、ボクもロボットだとアピールするドラえもんもいじらしい。小型のロボットが代打に入ったことに対し、ストライクゾーンの狭さに怒る相手投手も脇役なりに内面を感じさせた。
中盤からの争奪戦もまずまず。いつものように対抗意識を燃やして勝負をいどんできたスネ吉兄さんが、結果として悪質な敵を排除するオチも、スネ吉兄さん好きとして好ましかった。


コンテ演出は安藤敏彦で、スラップスティックな笑いはほとんどなく、ていねいに心の動きを追っている。怪しい男のサングラスデザインに趣味が出たかなと感じたくらい。
宇宙空間の描写で3DCGを用いた判断が少し面白かった。一度、中盤の宇宙開発報道でイメージカット的に3DCGを使って印象づけているため、宇宙開発に繋がる結末が少ない伏線のわりに唐突さがない。人工知能を持つ小型ロボットゆえ宇宙開発に参加するという結末自体がSF心をくすぐってくれる上、ただ別離の悲しさだけでなく50年後の再会を信じて願うという前向きな力強さも感じられた。


映画の本編は素晴らしかった。
まず巨大ロボットの大きさがプリミティブに伝わってくるコンテが良い。住宅街ではカメラをあおり、2階の物干し竿や電柱をなめて、さらに巨大なロボットの一部分を映しとる。高層ビル群では望遠でロボットの全身を映し、実景にロボットが存在する異物感と正確なサイズを実感させる。ロボットの行動ごとに路傍の自動車が振動ではねあがる、手間がかかるが効果的な演出も嬉しい。メカを組み立てる描写にはフェティッシュな快楽も感じられた。
見たことのない合金に驚くドラえもんの台詞を、組み立て中ではなく湖に浮いている場面へ変更していたところも地味に芸が細かい。原作では名づけに関連するだけの描写を展開させ、地球人の常識にあるロボットとの違いを強調している。その場面でちゃんと、ドラえもん自身もロボットではないかとツッコミが入ったところも細かい。