法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

在特会の徳島事件初公判で明らかになった産経新聞の的外れぶりと、弁護士の正体と

徳島県教組襲撃事件」の初公判についての報告ツイートを、id:three_sparrows氏がまとめていた。
【在特会】徳島県教組襲撃事件初公判【チーム関西】 - Togetter*1
情状酌量を求めるため主張を取り下げたい在特会と、裁判を利用して主張を行なう主権回復の会が対立したり、興味深い局面が多い。
ちくいち紹介しても冗長になるだけなので、裁判とそれをめぐる在特会の反応は、上記Togetterを実際に見ることを薦める。公判の時系列に合わせつつ、話題ごとに整理されているので読みやすい。


しかし在特会とは別個に注目すべき話題があった。在特会裁判には興味がない人にも紹介しておきたい。

全員が徳島県教組への抗議じたいは「正しかった」としながら、「やり方がまずかった」と発言。検事から「実は、徳島県教組は街頭募金をしていなかったという事実を知っていますか?」と聞かれ、全員が「知らなかった」と答える。
yasudakoichi
2010-11-17 21:08:09


徳島県教組が取り組んだ「募金」は、全て組合員を対象としたもの。同教組は街頭活動はおこなっていなかった。また、日教組本部は全国支部から集まった街頭募金の8倍にあたる金額を「あしなが」に寄付したという(検事の説明)。
yasudakoichi
2010-11-17 21:13:28

5月18日付で〈子ども救援カンパ問題 朝鮮学校支援で深まる対立〉という後追い記事も載せていました。 http://bit.ly/9wetgk RT @p2c_unobvious: 該当記事はこれですね。http://bit.ly/9cuOHt 〜 RT @montzaemon
three_sparrows
2010-11-18 01:35:32


そもそも義家議員は朝鮮学校の件にはまったく触れていませんしね。会議録→ http://bit.ly/cbfJp9 RT @p2c_unobvious: 徳島教組の件は、産経の朝鮮学校関係の記事は、間違ってないかもしれないけどミスリーディングな事が多いという事例の一つに〜
three_sparrows
2010-11-18 01:41:11

思わず二度見してしまった。要するに、日教組が連合に1億円を寄付したという産経新聞記事自体に誤解の原因があったという話だ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100319/crm1003191148003-n1.htm

 日本教職員組合日教組)が交通遺児らの支援を行う「あしなが育英会」などに寄付するとして、「子ども救援カンパ」名目で集めた寄付金の6割近くを占める1億円を、日教組が加盟する日本労働組合総連合会(連合)に寄付していたことが18日、明らかになった。このうち3750万円が逆に連合から日教組側に「助成金」として交付され、朝鮮学校へ通う子どもの就労支援に使われたとの報告例もあった。

                   ◇

 自民党義家弘介氏が18日の参院予算委員会で指摘した。鳩山由紀夫首相は「政治的活動に対し資金カンパをすることは禁じられている。政治的なカンパでないと信じたいが、文部科学省を通じて調査する必要がある」と述べ、地方公務員法で制限された政治的行為に当たるかどうか調査する考えを示した。

 日教組は昨年3月の中央委員会で、就学が困難な子供のいる家庭を支援する目的でカンパの実施を決定。使途として主にあしなが育英会への寄付を挙げ、そのほか「保護者の厳しい就労状況で就学できない子供」らを支援する「NPO団体など」への寄付を連合を通じて行うことを掲げた。

 日教組に所属する教員らが全国で街頭募金などを行った。15日の日教組臨時大会に提出された最終報告によると、カンパは総額1億7624万円で、あしなが育英会には7195万円が寄付された。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100319/crm1003191148003-n2.htm

 ところが、連合には育英会を大きく上回る1億円が送られていた。日教組の雑誌「月刊JTU」昨年10月号は、子ども救援カンパの「一部」を連合に寄付したと記載していた。

 連合はカンパを元手に日教組傘下の地方19教職員組合の申請に基づき、30事業に計3750万円を助成した。最終報告によると、7事業は地方の教職員組合への直接支給で、徳島県教組は「朝鮮学校へ通う子どもの就労支援」として150万円を受け取った。

 義家氏は「街頭に立ったりした教師は、育英会の活動にプラスになるとの思いだったことが聞き取り調査でも明らかだ」と述べ、募金の使途に疑問を呈した。

徳島県教祖以外が街頭募金へ協力したことは嘘ではないだろうし、徳島県教祖が「朝鮮学校へ通う子どもの就労支援」を受け取ったことも事実ではある。しかし記事が問題視している対象が整理できていない。結果として、徳島県教祖の責任となる形で街頭募金が朝鮮学校関係へ流用されたかのような印象を与えてしまった。
しかも義家議員が言及したわけですらない「朝鮮学校へ通う子どもの就労支援」をわざわざ取り上げ、その使途が疑問をていされるようなものだという印象も与えている。義家議員の問題提起は、日教組が寄付協力を教員へ事実上の強制をしているという内容だったのだから、これもまた記事の主張は的を外していると評価せざるをえない。
そもそも記事でも日本教職員組合サイト*2でも「連合を通じて」様々な団体へ寄付することが明記されているように、寄付において虚偽説明がされていたわけですらない。
日教組の構成員に対する事実上の強制や、寄付金の移動がわかりにくいという問題提起が、産経新聞の手にかかると全体から見て極僅かな150万円が特筆されてしまう。しかも検察の主張が正しいとすれば、当初の印象通りあしなが育英会への寄付金が主だったということとなり、日教組の使途説明には全く問題がなかったこととなる。


もう一つ、上記Togetterで言及されていない要素がある。

徳島事件初公判をちょっと振り返ってみる。被告は3名。ネイリスト(34)、会社員(23)、無職男性(20=犯行時未成年)。一般傍聴者39名、記者(9名)。他に情状証人として被告家族。被告側弁護士は早淵正憲氏(徳島弁護士会)。
yasudakoichi
2010-11-17 20:35:46

3名とも公訴事実をすべて認める。ただし弁護側は「業務妨害の計画性はなかった。いわゆる現場共謀(要するにその場の勢いでやった)」と主張。
yasudakoichi
2010-11-17 20:51:07


情状証人として、家族が証言。ネイリストの母親、会社員の父親、無職男性の父親がそれぞれ、「本人は反省している。家族としても以前から心配していた。今後は運動から手を引いてほしい」と訴える。
yasudakoichi
2010-11-17 20:55:55


その後、被告人が証言。全員が「反省している」「やりすぎた」とのことだったが、今後の活動参加については若干の温度差。「在特会からは離れる」(ネイリスト)。「在特会に戻るつもりはないが、自分なりに抗議活動をすることはあるかもしれない」(会社員)。「当分、裏方に徹する」(無職男性)
yasudakoichi
2010-11-17 21:04:16

弁護士「自己の不当な利益を目的としていない。計画性は無く、偶発的に発生した。街頭宣伝していても、路上に誰も人がいなかったので実効性がないと判断し、事務所に向かってしまった。直接抗議できるチャンスだと考えてしまった。朝鮮学校への募金を許せないという動機も、必ずしも間違ってはいない」
yasudakoichi
2010-11-17 21:32:58

Togetterでも仕事だからしかたないという複数の同情意見すらある無理な弁護だが、その場の勢いでやったという被告の心理自体は事実に近いのだろう。その場の勢いを何度となくくり返して反省しなかった団体という問題があるだけで。さらに被告それぞれに情状証人を呼んでいたり、形式的にではあれ被告へ反省の弁を述べさせたりもしている。できる限り事実に基づきながら被告に自身の罪を認識させ、しかも少しでも罰が軽くなるよう弁護人は努力したのだろう。
襲撃した事実関係に争う余地がほとんどなく*3、資金不足の団体であり充分な対価は期待できず、社会的な支援があるどころか団体の本部すら動かない*4裁判だ。それなのに弁護を引き受けるのだから、きっと相応に有能で、真面目な弁護士が担当しているのだろう。少なくとも、裁判で誇張抜きに政治主張した稲田朋美弁護士などとは正反対の人物像に違いない。
在特会が接見のために呼んだ弁護士が「人権派」だったという話 - 法華狼の日記
この早淵弁護士も、接見につきながら解任された弁護士と同じように、蔑視表現としての「人権派」で呼ばれるような仕事もしているのではないだろうかと推測できる。そこで「早淵正憲」という名前に「人権」などの言葉を入れてインターネットで検索してみた。
http://kaigi.pref.tokushima.jp/discuss/cgi-bin/WWWframeHatugen.exe?A=frameHatugen&USR=webusr&PWD=&XM=000000000000000&L=1&S=15&Y=%95%BD%90%AC11%94N&B=-1&T=-1&T0=-1&O=-1&P1=&P2=&P3=&P=1&K=54&N=321&H=1101103&W1=&W2=&W3=&W4=*5

中学校歴史教科書における「従軍慰安婦」の記述削除の反対について
 「従軍慰安婦」の存在等を子孫に伝え、子孫が同じ過ちを繰り返さないようにすることこそ、私たちの使命であること等のため、「従軍慰安婦」問題を慎重に審議し、中学校歴史教科書における「従軍慰安婦」の記述削除を求める意見書を国に提出しないよう配慮願いたい。

徳島弁護士会
 会長
  早渕正憲

大当たり、やはり早渕弁護士は人権派と呼ばれそうな活動をしていた*6正確には弁護士会会長として会の意見を代表しただけなのかもしれないが、逆にいうと弁護士会会長となれば「人権派」的な活動を行うことが普通ということだ。
こうなると、裁判で敗訴した後の在特会側から、弁護士が人権派だから裁判で手を抜いたのだ、といった主張が飛び出すことまで想像してしまう。想像に終わればいいのだが……

*1:以下に引用するツイートは、全てこのTogetterから引いたもの。

*2:http://www.jtu-net.or.jp/syun0906e.html

*3:だからこそ、産経新聞誤報という新事実が出たことに驚かされたわけだが。

*4:詳細はTogetter参照のこと。

*5:徳島県建国記念の日奉祝会」のような一部を除き、性格も異なる様々な徳島県の団体が記述削除へ反対する請願を出していることも興味深い。

*6:名前の漢字が異なるが、検索したところ事務所などの名義はこちらを使っているようだ。http://local.goo.ne.jp/tokushima/shopID_nttbis-36-5117/