法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』しずかちゃんと温泉へ行こう/ドラえもんだってママがほしい

〜問い「そこに女子更衣室があります。どうしますか?……どうしますか?」答え「……覗きます!」(by『そらのおとしものf』)〜
今回はアニメオリジナルの2本立て。秘密道具もアニメオリジナル。不満点もいくつかあるが、日常SFらしい描写に満ち、笑いと涙のバランスもいい回だったと思う。


Aパートは、「温泉掘り当てペアスコップ」を使って、しずかちゃんのために温泉を探して掘ってあげる物語。脚本は相内美生
町内であっさり温泉が見つかる展開は、地下水が豊富な日本、特に関東平野では当然とすらいえる。深く掘れば天然温泉を見つけることは難しくない。どちらかというと3mを掘ったくらいで温泉が噴き出す描写がやばい。空き地で掘り当てた時は、どこかの銭湯の配水管を壊したというオチかと思ったよ。人力で最後まで掘るのではなく、ある程度までスコップで掘って探した後はジェットモグラを使うという描写で充分だったのではないかと。
何度か町内に露天風呂を作ったが、空き地では周囲の視線が気にかかって入ることができず、裏山では風景を描きに来た老人2人連れと出会ってしまう。まあギャグとしては良かったし、覗こうとせずに周囲を見張っていようと提案しただけでも、のび太は成長したのだと思うことにする。その老人達が落としていった水彩画用のバケツから、様々な温泉をコップに入れて体を小さくして入ろうと思いつく展開は面白かった。映画『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』で描写されたミルク風呂から発展させ、湯の種類に合わせた容器を用いる趣向が楽しい。ゼリーが冷えて固まってしまうオチも、いかにも日常の延長にあるSFらしくて納得できる。
コンテ演出は宮下新平で、動きの見所は薄かったが、レイアウトは良い。特に、空き地で穴掘りしているのび太の手をなめてドラえもんを見せ、その頭上に土管が見えるカットが出色。結末のミニサイズ風呂も巨大感があった。


Bパートは、ママが家にいない間ののび太をだらけさせないよう出したハハオヤロボット「オフクロー」が、誤ってドラえもんを子供と認識してしまう。脚本は富永淳一。
勝手に押入れに入って、ドラえもんの好きなアイドルを確認するオフクローが嫌リアル。ドラえもんとミイちゃんが部屋で仲良くしている時、何度も茶や菓子を持ってくるウザさが嫌リアル。そんなオフクローを邪険にしたドラえもんにミイちゃんが幻滅する展開も嫌リアル。しつこく手編みしたマフラーを薦めてくるおせっかい焼き、料理が下手なのに*1必死でドラ焼きを作ってあげる優しさもリアル。
誤認識が発端だったからこそ、拒絶しながらいつしか本当に母親であるかのように感じていくドラえもんがいい。まずいドラ焼きでもオフクローのために美味しいといってあげる。8時間という短い期限が来て別れる結末もしっとりと悲しい。この物語は、ドラえもんの保護者要素が強調されていたリニューアル前のアニメでは不可能だったろう。
映像も全般的に良かった。日が落ち、ドラえもんの背後で車窓光る夜行列車がすぎさっていく光景が情感にあふれる。作画監督は三輪修で、原画に森下昇吾など。冒頭でママを見送るドラえもんに眉毛があるところが渡辺歩回を思わせる。終盤の乱雑に汚れた台所なども良かった。

*1:どこの感想を見ても突っ込まれているが、母親の代役としてそれは機能的に問題ありすぎだろう。設計者に何かトラウマでもあったのか。それとも8時間だけの短期的な代役だから、あえて大きな欠点も作っているのか。