法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『たまゆら』ひとつめ:「大好きがいっぱいの町、なので」

佐藤順一原案かつ監督のOVA。アニメワンで先行配信していたので視聴してみた。
http://anime.biglobe.ne.jp/title/3974/
OPEDを入れて15分ほどの短編なので、そう複雑な物語ではない。瀬戸内海に引っ越してきたカメラ好き少女の視点で舞台となる町を点描し、新たな友人との出会いを描くだけ。しかし穏やかな語り口でいて次々に場面を移し、新しいキャラクターとの出会いが描かれ、見ていて飽きさせない。


かたむいた自転車を戻したり、地味に難しいカットが連続するところが作画の見所。もともと自転車は形状が複雑で、道を曲がるだけでかたむいたりハンドルと前輪が連動したりと動きも難しい。それでいて見慣れた存在なので、下手な作画をした時には違和感が強くなる。そんな自転車が全編にわたって自然に作画されていること自体が珍しい。
演出的には主人公の少女が手ぶらで被写体を探す場面が面白い。指の細かい動きをクローズアップで、被写体を全身で追いかける小柄な身体のしなやかさをロングショットで、少女をフェティッシュに映し出す。
描き込みすぎないキャラクターも清潔感あり、リアルな演出にもデフォルメ演出にも不自然さを感じさせない。


全体的に良い意味で力をいれすぎず、技術的に難しい描写もさりげなくこなし、気楽に見られるよう気配りされた作品だった。
文字演出という観点から同監督の『うみものがたり』からの流れで見ることもできる。