法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

関与の事実の確認とは何だろう

一ヶ月ほど前の報道だが、国立歴史民俗博物館沖縄県集団自決で軍が関与したという記述が復活したという。
http://www.asahi.com/national/update/0811/TKY201008110229.html

 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)が常設展示している沖縄戦の「集団自決」について、同館は旧日本軍の関与があったことを説明文から削除したことを見直し、9月にも軍関与の記述を復活させる方針を固めた。館内外の学識経験者20人のリニューアル委員会が7月中に大筋合意したという。

 同館は今年3月、常設展示室「現代」に「集団自決」のパネルコーナーを設置。説明文の原案では軍の関与に触れていたが、「慎重にした方がいい」など多様な意見を背景に「集団自決に追い込まれた人びともいた」との表現になった。

 同館は当時、「展示から生まれる議論を通じて、さらに調査研究を進めたい」との姿勢で、展示された説明文には沖縄県の市民団体から多数の抗議が寄せられた。3月から4回、同館のリニューアル委員会で沖縄戦に巻き込まれた人々の証言集を精査するなどの作業を重ねた。その結果、7月18日の委員会で軍の関与は明らかとし、早ければ9月にも具体的表現を決めるという。

「多様な意見」とは、はたして学問として通じるような「意見」だったのかどうか。
ちなみに半年前の琉球新報では、教科書における軍強制記述が復活困難という報道があった。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-154072-storytopic-62.html

 07年の訂正申請で、日本軍の関与については記述が認められたが、教科書執筆者らは軍の強制の事実が不明確だとして08年も訂正申請する準備を進めていた。しかし、教科書会社側が、現在の記述で一定程度回復しているなどの理由で難色を示したため、09年度から使う教科書の記述復活に向けた申請を断念した。

あくまで「関与」という弱い表現にとどまっている時点で、国立歴史民俗博物館の記述も被害者へ充分に配慮した表現でないことがうかがえる。


さておき、国立歴史民俗博物館の記事に対するコメントで、気になった意見が一つあった。
はてなブックマーク - asahi.com(朝日新聞社):集団自決の説明文に「軍関与」復活 国立歴史民俗博物館 - 社会

yingze 日本, 軍事, 歴史, 教育 事実と異なることを記述するのは拙いんじゃないの?/事実が確認されるまでは、当時の教育や報道の影響の結果、と書くべきじゃないの?/id:at2002 それ当時の日本の戦車性能・運用を踏まえたうえで色々異論があるよ。 2010/08/12

記事には「証言集を精査」した結果とあるが、それで「事実が確認」されたとは考えられないのだろうか。
いや、たとえ「事実」に極めて重い基準を用いることは個人の自由だとしても、「日本軍の関与」が確認できないとしつつ「当時の教育や報道の影響の結果」は確認できているというid:yingze氏の基準がよくわからない。
そもそも「日本軍の関与」と「当時の教育や報道の影響の結果」は両立するのであって、一方を選ぶべきといいたげな文章自体が理解しがたい。そして「当時」において「日本軍」と「教育や報道」はどちらが強制力をもって他方に制限をかけていたかを思えば、どちらに重みある記述を行なうべきかは自明だと思うのだが。