法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

川本喜八郎監督と岡本忠成監督の作画アニメ

川本喜八郎監督が亡くなっていたという。高齢だったので大往生だろうと感じるが、最近まで『冬の日』や『死者の書*1といった新作を精力的に発表していたので、もちろん惜しい気持ちは残る。最新のWEBニュースでは産経記事がくわしいようだ。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/100827/tnr1008271046009-n1.htm

 NHK人形劇「三国志」などを手がけた日本を代表する人形アニメーション作家、川本喜八郎(かわもと・きはちろう)さんが23日、肺炎のため死去した。85歳。通夜、葬儀・告別式は親族者で済ませた。喪主は非公表。後日「しのぶ会」を開く予定。

 旧制横浜高工(現・横浜国大)を卒業後、東宝撮影所美術部で映画製作に従事。昭和25年にフリーの人形美術家になり、劇作家の飯沢匡(ただす)氏らとグループを作った。人形を少しずつ動かすコマ撮りの手法が特徴的で、28年に日本で初めての人形アニメーションほろにが君の魔術師」を製作した。

 旧チェコスロバキアに渡り人形アニメの巨匠イジィ・トルンカ氏に師事。帰国後は処女作「花折り」をはじめ「鬼」「道成寺」「火宅」など、独自の様式美と伝統的な人形表現を盛り込んだ人形アニメーション映画を次々と発表した。NHK人形劇「三国志」「平家物語」の人形美術を担当し幅広い人気を得た。

 7年、勲四等旭日小綬章受章。折口信夫原作の映画「死者の書」(平成17年)を監督したのが最後の作品となった。

 長野県飯田市飯田市川本喜八郎人形美術館では、川本さんの死を悼み、27日から9月5日までを入館無料とし、記帳台を設置している。 

NHKで放映された人形劇『三国志』について、人形造型という観点から模型雑誌『ホビージャパン』が回顧特集していたことがあり、今も印象に残っている。
その『三国志』で知られているように、川本監督は主として人形アニメーション作家として活躍していた。しかし一つ、ぜひ手描きアニメ好きに見てもらいたい作品にかかわっている。短編映画『注文の多い料理店』だ。
作品カタログ:短期映画:アニメーション | 株式会社桜映画社:映像製作 映像販売 ライフサイエンス
もともとは共同で「パペットアニメーショウ」*2という映画上映イベントを行なっていた岡本忠成監督の遺作。岡本監督が制作途上で死去されたため、監修として引きついで完成させた。制作手法は基本的にセルアニメーションだが、絵画調の絵柄で作画され、しかし静止画の連続ではなく、なめらかによく動く。アレクサンドル・ペトロフ監督の短編映画『老人と海』が動く油絵だったとすれば、『注文の多い料理店』は動くパステル画といったところか。宮沢賢治の童話として最も恐怖度の高い作品に異なる光を当て、さらなる奥深い暗黒へ導いた傑作だ。
VHSでも出ていたが、図書館向けの高額DVDセット『大藤信郎賞受賞 短編アニメーション全集』で他の川本作品とともに収録されているので*3、もし近場の図書館で収蔵されているならば視聴してほしい。もちろん純粋な川本作品ではないのだが、作画アニメが好きならば必見だ。

*1:まだ未見。

*2:「WEBアニメスタイル」の五味洋子コラムでくわしく解説されている。http://www.style.fm/as/05_column/gomi/gomi46.shtml

*3:http://www.style.fm/log/02_topics01/top1227.html