法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

GYAOで『はだしのゲン』『はだしのゲン2』が無料配信中

どちらも9月5日まで配信予定とのこと。
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00499/v08968/
http://gyao.yahoo.co.jp/p/00499/v08969/
どちらもマッドハウスが実制作を担当しており、一個のアニメ映画としても見所が多い。配信は部分的にしか見ていないので、下記の作品紹介は半分ほど記憶にたよっている。


第一部は表現主義的な演出を用いる真崎守監督。アバンタイトルの作画演出は今見ても新鮮だ。
開始10分ごろにある戦闘機の機銃掃射場面が、短いながら作画アニメしている。瓦屋根を背景動画でなめたり、鮮烈な色合いで悪夢的なイメージを描きつつも、ここだけ切り取ればアクションアニメとして楽しむこともできるだろう。
一方、原爆投下シーンは長く、作画枚数も使っているが、さほど良い作画ではなく、カット割りもだるい。しかしそのことが逆に映像から快楽性をぬぐいさり、原爆の惨禍が不快な出来事として表現できている。今になって考えるとテッサ・モーリス=スズキ『過去は死なない―メディア・記憶・歴史』が提起した問題を、結果的にせよ回避しているといえるかもしれない*1

したがって漫画に、たとえば、死や負傷の一見凄まじい描写があっても、感動や衝撃をそれほど感じなかったり、おもしろさや快い刺激を感じることさえあるかもしれない。冒険、ホラー、エロティックな漫画の文脈で見慣れている似たような画を、はっきり意識しないままに、連想するからである。

物語が進むにつれて作画は悪くなっているので、制作者の意図した演出ではない可能性が高いとは思うが、機銃掃射との対比で考えることもできるだろう。


第二部は平田敏夫監督。現在も精力的にアニメ制作にかかわっているアニメーターで、たとえば『時をかける少女』で中心的なモチーフとなった架空絵画「白梅ニ椿菊図」の作者でもある*2
廃墟となったヒロシマをたくましく生きる少年達の物語として構成され、作画も特筆するカットはないものの安定している。レイアウトもいい。アニメ映画として娯楽性が高いと同時に、安易な悲劇として原爆を回収しない原作マンガの良い一面を引き出している。純粋に一個の作品として見たいなら、こちらを薦めたい。

*1:引用は『原爆文学という問題領域』112頁から孫引きした。

*2:http://bp.cocolog-nifty.com/bp/2007/04/time_leap_92_5193.html