法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

朝鮮学校の公園使用を現段階で違法と主張するのは、マッチポンプ嫌韓流

明らかな暴力的行動を続けて数年、ようやく在特会幹部が逮捕された。警察の恣意性には疑問を持つし、日本社会の在日朝鮮人に対する抑圧が全て解決するにはほど遠いが、ひとまずは歓迎できる流れと受け止めたい。
しかし、在特会は批判の方法論がまずかっただけで、もともと公園を不法占拠した朝鮮学校が悪い、といった主張が散見されるので、念のため指摘しておく。
http://www.asahi.com/national/update/0809/OSK201008090160.html*1

 京都朝鮮第一初級学校(京都市南区)の前で、「日本から出て行け」などと拡声機で叫んで授業を妨害するなどしたとして、京都府警は、在日特権を許さない市民の会在特会、本部・東京)の幹部ら数人から、威力業務妨害などの疑いで近く事情聴取する方針を固めた。

 捜査関係者によると、在特会幹部らメンバー約10人は昨年12月4日昼、同初級学校の周辺で1時間近くにわたり、拡声機を使って「日本人を拉致した朝鮮総連傘下」「北朝鮮のスパイ養成所」「日本から出て行け。スパイの子ども」などと怒鳴り、授業を妨害した疑いなどが持たれている。

 在特会のホームページによると、在特会は、同初級学校が、隣接する児童公園に朝礼台やスピーカー、サッカーゴールを無断で設置して「不法占拠」をしていると主張。これらを撤去したうえで街宣活動をしたとしている。在特会側は街宣の様子を撮影し、動画投稿サイト「ユーチューブ」などで流していた。

 学校側は昨年12月末、威力業務妨害や名誉棄損の疑いなどで府警に告訴。その後も街宣活動があったため、今年3月に街宣の禁止を求める仮処分を京都地裁に申し立て、地裁は学校周辺で学校関係者を非難する演説やビラ配りなどの脅迫的行為を禁じる仮処分を決定した。さらに学校側は6月、在特会と街宣活動をしたメンバーらを相手取り、街宣の禁止と計3千万円の損害賠償を求めて提訴している。

 京都市などによると、同初級学校は約50年前から、市が管理する児童公園を運動場代わりに使用。市は昨春以降、市の許可を得ていないとして設備の撤去を求めてきた。府警は、学校側の関係者についても、都市公園法違反容疑で立件するかどうか検討するとみられる。
 昨年12月の街宣活動に参加した在特会メンバーの一人は、朝日新聞の取材に「公園の無断使用は許されない。自分たちはマイク一つで、ぎりぎりの範囲でやってきた。見る人が見たら共感してくれる」と話している。

 在特会桜井誠会長)は2006年に発足。在日韓国・朝鮮人の特別永住資格は「特権」と批判し、全国各地でデモ活動などを続けている。ホームページによると、全国に26支部あり、会員は9千人以上いるという。

「マイク一つで、ぎりぎりの範囲でやってきた」という在特会側の主張をそのまま報じているが、同じ記事中でも勝手にサッカーゴールを撤去したことを書いてあるのだから、そこは深く追求してほしかったところ。市行政ならともかく、第三者団体が勝手に朝鮮学校の持ち物を撤去していいわけではない。
また、この朝日記事に書かれた「市は昨春以降、市の許可を得ていないとして設備の撤去を求めてきた」という部分は説明不足で、誤解を招く内容になってしまっている。市行政側だけの判断で撤去要請が行なわれなければならないほど切迫した事態であったわけではない。実際には半世紀にわたって特段の衝突もなく公園が使用されていたのだが、在特会が騒ぎ出したと同時期に数名の市民からなる抗議があり、市が申し入れたという順序があったらしい*2
むろん、在特会と関係していれば必ず誤っているというわけでもないのだが、関連性がうかがえることは指摘するべきだ。何より、公園使用に長らく抗議がなかったことは違法性にも関わってくる情報であり、伝えるべきだろう。


朝鮮学校側が都市公園法違反容疑で捜査されていることについては、続報の毎日記事がくわしい。地域住民の指摘から市行政が動いたことも明記されているし、末尾のコメントからは市側の当惑も伝わってくる。
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20100811ddlk26040404000c.html

 ◇朝鮮学校弁護団

 京都朝鮮第一初級学校(京都市南区)に対する「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の「抗議行動」が刑事事件に発展した10日、学校側の弁護団が中京区で会見を開き「警察が着手し、児童や保護者も安心したと思う」と述べた。

 弁護団によると、京都地裁が3月に学校近辺での演説を禁止する仮処分決定を出した後も、在特会側は複数回繰り返し、登下校の児童を保護者が引率するなど警戒していたという。弁護士の一人は「表現の自由を隠れみのに、子供を対象にデモをすることは許されない」と非難。金志成(キムチソン)校長は「子供たちが安心して健やかに育っていけるよう願っている」とのコメントを出した。

 一方、学校側が隣接の公園を校庭代わりに使ったとする都市公園法違反容疑で捜査を受けていることに関し、弁護団は「学校関係者から問題ないと聞いているが、コメントする立場にない」とした。
 ◇公園の使用に、京都市が指導

 在特会が抗議の理由に挙げた京都市立の児童公園。管理する市南部みどり管理事務所などによると、設置の2年後、隣接地に開校した同校が間もなく公園を使用し始めたという。

 市は昨年2月、地域住民から指摘を受け、公園内にあるサッカーゴールや朝礼台などを同校の所有物と確認。都市公園法に基づく設置許可をとっていないため撤去するよう指導していた。

 市は「50年以上たっており、どういう経緯で使用が始まったか不明。現在は撤去されており、学校が地域住民らと譲り合って使うことは問題ないのだが」としている。

そもそも、この都市公園法違反容疑自体、在特会による刑事告訴で始まったことは注意しておこう。
12.21在特会は京都朝鮮学校側を告発しました | Doronpaの独り言

平成21年12月21日(月)在日特権を許さない市民の会

在日本朝鮮人総連合会朝鮮総連)中央常任委員会議長 徐萬述
学校法人京都朝鮮学園理事長
京都朝鮮初級第一学校校長 高柄棋

の3名を都市公園法違反で訴える告発状を京都南警察署に提出し、精査のうえ当日受理されました。

この時点で、捜査こそされても実際に逮捕や立件に発展するか怪しいことを、理解していただけるかと思う。これもまた自作自演のようなもので、記事だけを読んで警察が独自判断で朝鮮学校の犯罪性を問おうとしていたと解釈してはならない。
自身の活動成果を桜井誠氏が喧伝した結果、報じられている行政の対応がマッチポンプで生まれたという証拠が残っているのは皮肉といっていい。


さて、先述したように問題の公園は半世紀ほどの長きにわたって利用されてきた。長期間にわたって使用されてきた蓄積があるならば、今さら第三者が犯罪に問うことはためらわれる。よく指摘されたこととして、土地の取得時効は10年であり、もし他人の土地を勝手に占拠した場合でも20年もたてば合法的に得てしまう。
むろん実際に容疑がかかっているのは都市公園法であり、そのまま土地取得時効を適用することはできない。ここで注意してほしいのは、土地取得における時効をはるかに超えるほど朝鮮学校が使用してきた歴史は重い、ということだ。在特会が出てくるまでは特段の問題も発生していなかったようだし、捜査をされている現在になっても市側は許可を出していないという主張もせず、逆に「学校が地域住民らと譲り合って使うことは問題ない」と語っている。公園使用について役所の支援を受けていたという話もあるし*3在特会が別個にはたらきかけたために市と府警の足並みがそろっていないだけであって、違法という判断がくだされる可能性は限りなく低いと考えざるをえない*4


むろん、合法であろうと朝鮮学校を批判するということも、形式的には可能だろう。しかし日韓併合から終戦までの政策について韓国側が補償を求めた場合、在特会の反応がいかなるものであったか、思い出してほしい。
http://www.zaitokukai.info/modules/wordpress/index.php?p=194

併合における朝鮮半島近代化、日本の統治内容はことさらここで指摘する必要もないほど周知されてきていると思いますが、賠償ということであれば1965年の日韓基本条約で日韓双方が請求権を放棄する代わりに、事実上の賠償金として8億ドル(当時のレート、韓国の国家予算の倍以上)の巨額の経済援助を日本が行うことで日韓両政府が合意しています。その結果として韓国は漢江の奇跡と呼ばれる経済復興を遂げ、朝鮮戦争後世界最貧国の一つとなっていた国家経済を立て直し、現在世界15位の経済強国を自称するまでに至ったのです。

にもかかわらず、日本の援助に感謝するどころか謝罪おかわり、賠償おかわりを無限ループのように求め続ける唾棄すべき恥知らずの民族に対して、これまでの日本側は毅然とした態度を示すことができませんでした。戦後自虐教育に起因する不必要な罪悪感を植え付けられた日本人は、ただ黙って彼らの横暴を見て見ぬ振りすることしかできなかったのです。

そう、韓国政府が請求権を放棄したから個人に対する補償も必要ないという論理を用いてきた。この論理は在特会にとどまらず、韓国に対して補償や謝罪を拒絶する場面でよく用いられる。場合によっては、北朝鮮に対する賠償も韓国に対して行なったという論理で、国交正常化していない北朝鮮に対しても日本が今さら行動する義務はない、という主張まで行なわれる。
つまるところ法律で決まったこと、国家が決めたことだから正しい、という論理だ。日韓基本条約を結んだ時期の韓国は軍事独裁政権であり、日韓政府はともに自己の利益を追求し、虐げられた人々を重ねて抑圧したわけであるが、今回は横に置こう。個人の権利と社会が衝突するという観点でいえば正反対であり、どちらが人権によりそった態度であるかは指摘するまでもあるまい。


ここで注意してほしいのは、現時点で法律に決まったことであれば正しいという論理を持ち出すならば、まだ刑事告訴を受けて捜査しているだけの朝鮮学校公園使用に対しても同じ論理を適用するのが道理ではないか、ということだ。
いや、韓国政府の国民に対する抑圧だけではない。韓国併合は合法であったとか、強制連行は合法であったとか、従軍慰安婦は合法であったとか、人権が機能していなかった過去の合法性を主張しておいて、現代日本において合法であり現実にもさしたる問題が発生しなかった事案を違法であると主張する……そういう身勝手さは暴力に主張を乗せることとはまた別の問題であり、在特会以外にもよく見られる。
よく指摘されるように、在特会の問題を暴力的な活動のみと思っていると、より大きな問題を見誤る。かつての支持層や中立を標榜する層からもすでに切断対象となりつつある在特会だが、その暴力性のみを批判しただけでは在特会の差別性と距離をとったことにはならないのだ。

*1:この記事では事情聴取の方針という記述だが、47NEWS等の続報で4人が逮捕されたことは確定している。http://www.47news.jp/CN/201008/CN2010081001000208.html……ただし起訴はまだだし、公判の行方がどうなるかも未定ではある。

*2:http://d.hatena.ne.jp/dondoko9876/20091215/1260860772在特会がデモを行なうまでもなく、道路拡張によって公園はサッカー練習ができなくなる予定だったという。

*3:http://d.hatena.ne.jp/dondoko9876/20091220/1261277085「地元自治会とちゃんと話し合って了承されていたそうです。そして地元では学校が公園を使うことがまったく当たり前のこととして、周辺住民に認識されていたと。さらに役所も、それを支援してきたということでした。」とのこと。実際、半世紀も使っていて周辺住民から認識されていなかったとは考えにくい。

*4:少なくとも占拠していたという朝礼台等は撤去されているし、公園が使われだした経緯を市が把握していないし、公判が維持できるとは思えないのだが。