法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

映画『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ天使たち〜』の予告映像公開

映画『ドラえもん のび太の人魚大海戦』の劇場公開時ににおわされ、すでに各所で公式情報として上がっていたリメイク作品の予告映像がTVで放映された。
ザンダクロスはデザインが微妙にリニューアルされているが、おおむね映画版を踏襲しつつ*1、現代的なメリハリのついたプロポーションに改められている。太ももにディテールを入れてノッペリした感じをなくしているところからは、『機動新世紀ガンダムX』以降の大河原邦男デザインを思い出させる。
手書き作画のアニメロボットとして見ても、さすがシンエイ動画の総力が注ぎ込まれているだけあって素晴らしい作品を予感させる。手書きによる描線の生々しさを活かしてきた新生『映画ドラえもん』シリーズにあって、無機的で重量感ある存在を大量に見せるのは初めてといってよく、その新鮮味も期待できる。しかし、参加しているアニメーターが予想できない。冒頭のエフェクト作画の散り具合から見て、橋本敬史の参加はほぼ確定だと思うのだが……


予告映像は2011年版の映画公式サイトでも見ることができる。
「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」公式サイト
TVの映像ではスタッフが確認できなかったが、公式サイトの全長版動画を見ると、監督に寺本幸代の名前が確認できる。昨年の11月13日を最後に本編へ登板しなかったのは、この作品を準備していたためだろうか。女性演出家はアクション演出に強くないという偏見があるのだが、映画『のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』で初めて映画監督をつとめた際は、他の演出家と共同でコンテを切りつつも見事なアクション演出を見せた。さらに寺本監督は以前にも巨大ロボットが登場するエピソードでコンテ演出を担当しており、こちらも満足度は高かった*2。巨大感の出し方やアクション演出に対する懸念はない。
脚本は清水東。どちらかというとコメディに強い印象があるので*3、ただでさえ短編よりシリアスな大長編で最も危機感あふれる作品への登板は意外だった。記憶ではドラえもんの脚本を手がけたこと自体がなかったこともあり、全く予想外だ。今回こそロボットアニメを多く手がけてきた大野木寛が脚本をつとめるべきと思っていたのだが……予想を裏切り期待を超えてくれるよう願おう。


また、公式サイトに動画以外のコンテンツはまだ出そろっていないが、巨大ロボットであるザンダクロスが鉄人兵団の指揮官と同サイズであるかのように描かれているところが目を引く。もちろん、あくまでイメージカットにすぎない可能性もある。
そもそも今回に公開された予告映像自体が、どこまで本編で使われるかは未定だ。過去の映画でも『のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』予告映像では映画本編と違って地球脱出時にドラミちゃんが紛れ込んでいた。映画『のび太と緑の巨人伝』にいたっては、最初の予告映像はほとんどが本編で使用されないイメージ映像であり*4、多用された宣伝映像でも高架下を巨大な根が突き出すカットは本編に存在しなかった*5。今回の予告映像でも、たとえばザンダクロスが転げるカットはザンダクロスのギャグ化としては描写が早すぎるから本編では使用されないだろう。


最後に、不安点を少しばかり。予告映像の最後でザンダクロスの頭脳が卵のように描かれているところは、原作以上のデウスエクスマキナを予感させ、やや不安を感じさせる。
そう、『のび太の鉄人兵団』は人気こそ高いが、原作の構成からして大きな不備がある。ヒロインのキャラクター像こそ評価が高く、謎めいた冒頭から孤独な戦いを強いられる終盤までの構成こそ素晴らしいが、あまりに危機を大きくしてしまったため問題解決にタイムマシン使用という反則級の方法を取ってしまった。その方法において自己犠牲を必要としたために御都合主義感こそ軽減されたものの、タイムパラドックス問題が全く考慮されていないし、クライマックス戦闘におけるのび太の不在感という問題もあった。個人的には、タイムパラドックスを解決しつつ、のび太に物語の主導権を戻す方法もいくつか考えているのだが、さてリメイクはどう料理するだろうか。

*1:原作と映画では赤と青の配色がおおむね逆となっている。肩が赤いのは映画版。

*2:感想はこちら。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20081212/1229290185

*3:『Yes!プリキュア5GoGo!』第9話は今でも記憶に残る傑作。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080403/1207233443

*4:http://doraeiga.com/2008/index.htmlの「動画コンテンツ」から予告編1を選択すると、キー坊が高速で跳び回る予告だけの映像が見られる。

*5:予告編2で1分ころに確認できる。