法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『デジモンクロスウォーズ』第1話 タイキ、異世界へ行く!

フジテレビ系列の日曜朝からテレビ朝日系列のゴールデンタイムに放映枠が移った『デジモン』シリーズの最新作。
シリーズディレクターはえんどうてつや。最近の仕事では、同じ東映作品の『ONEPIECE』における4週連続演出*1が印象的だ。
シリーズ構成は三条陸テレビ朝日系列で放映された東映作品『ガイキングLOD』で初めてアニメのシリーズ構成を行いながら成功し、続いて『デジモン』シリーズとスタッフが重なる『ゲゲゲの鬼太郎(五期)』のシリーズ構成も評価が高い。制作陣の中でも期待を持たせてくれる1人だ。
キャラクターデザインおよび総作画監督は浅沼昭弘。やや濃い目に影やハイライトを入れつつ、シンプルな描線が特徴的なアニメーターで、過去シリーズでも活躍していたため違和感はない。むしろ『デジモンセイバーズ』で大幅に絵柄を変えたのに今回で旧シリーズ風のデザインへ戻したため、古臭い印象があるくらい。


初回の演出と脚本はシリーズディレクターとシリーズ構成が担当。
物語自体は異世界冒険物の導入として定石的。特に目新しい場面こそないが、大量の設定説明をさばきつつ各キャラクターの立ち位置も描ききっている。
アバンタイトルの引きが良いだけで見所を終わらせず、本編に入っても主人公のお人よしな性格や知性をバスケットボール場面で楽しめるよう表現し、対するヒロインや副主人公の性格も主人公とかかわる言動で自然に描写。
主人公とデジモンが互いを助けることで関係が構築され、その信頼を受けて合体強化されたデジモンが強敵を退けて終わる展開も、今回単独で楽しめつつ今シリーズの方向性を示す、良い物語構成だ。


そして作画監督は竹田欣弘。浅沼デザインよりも濃いキャラクター作画を行いつつ、意外とデフォルメされたアクション作画も得意とする。原画にも今木宏明や八島善孝*2といった作画監督クラスが多数参加し*3、初回の作画に限れば歴代シリーズ最高といっていい。
何といっても、大規模な戦闘シーンで始まるアバンタイトルのつかみが素晴らしい。ワイド画面を活かしたデジモン総進撃演出も良くできているし、描き込まれながら精緻に動く作画は過去シリーズ最高といっていい。
しかも、後でバンクとして使いまわされるカットを大塚健*4と冨田与四一*5がBANK原画というクレジットで担当しているが、そのバンクの物量自体がアクションの相当量をしめつつ物語から浮いておらず、作画全体の印象を高く底上げしている。
細かい芝居作画や風景描写も文句なく、アニメで描くのは意外と難しいバスケットボールも破綻せず描けていた。


ちなみに放映時間が他のTVアニメと比べて短いため、スタッフクレジットはOPで全て表記され、EDが存在しない。しかしこのOPは、『デジモン』シリーズの歴代OPが主題歌も演出も印象的であったことに比べると、やや見所が散漫で印象に残らない。放送終了後のミニコーナーも今のところ面白味を感じられない。
残念ながら番組フォーマットは手放しで褒められないかな。サブタイトルで用いたデジタル世界風特殊効果が面白く、歴代シリーズのメインデジモンが登場するアイキャッチが良かったくらい。

*1:東映の「演出」は他社アニメ作品と違ってコンテや音響といった担当各話全体を担当する立場だが、えんどうてつやは音響演出も行えるので東映方式に合った仕事ができたようだ。

*2:山勘では後半の地割れを担当していると思う。

*3:ただしクレジットの後半分はOPを担当した原画だろう。

*4:デジモン』シリーズと共通項が多い作品として『金色のガッシュベル!』のキャラクターデザインが印象的。ただし現在はアニメーターとしてキャラクターよりアクションやメカに全力を注ぎたいとのことで、事実さまざまなTVアニメでメカ作画監督を担当し、周囲から浮くことなくレベルの高い仕事を行っている。本人によるツイッター情報では、バンクだけでなくOPも担当したが、『機動戦士ガンダム00劇場版』が終わるまでは本編参加が難しいとのこと。http://twitter.com/ken_oo/status/17864262013。また、第2話の合体バンクは別人が担当する予定らしい。http://twitter.com/ken_oo/status/17958698360

*5:華麗かつシャープな絵柄ながら、けっこうキャラクターの体型をフリーキーに作画することが多い。止め絵の美しいキャラクターと、激しいアクションの両方で楽しませてくれるアニメーター。