法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』第64話 旅路の涯

最終回。
アクションも世界観の掘り下げも前回で終わったので、個々人の物語を一区切りさせるために十分な描写が費やされた。個人的には最終回にも一騒動くらいほしかったが、キメラ関係で亀田作画が楽しめたので、それなりに満足はできた。
主人公達の住んでいた国自体が「父」が作った巨大な箱庭でしかなく、そこから旅立つことで物語が終わるという落としどころも、悪くないと思う。作品のキーワードである「等価交換」の位置づけについては、いかにも會川昇らしい皮肉な真実が明かされた前作に比べると、やや甘いと感じるところだが。


最終回なので全体の感想も書いておこう。
名実ともに成功した前作と比較され続け、連載中の原作を尊重しながら時期を合わせて完結するという難しいメディアミックスを要求されながら、見事に着地したところは感心した。第1話*1や総集編*2といったアニメオリジナル描写もおおむね違和感なく、よく原作を補完していたと思う。
しかし、やはり前作と間を置かずアニメ化したため、シリーズ構成に少なからず問題をかかえていた。特に1クール目の圧縮された展開は、前作で映像化された内容を早々と終わらせたいという努力が見えるからこそ、見ていてつらかった。逆に、4クール後半から5クール前半にかけては、先が見えた展開をじりじりと引きのばしている感があった*3
キャラクター設定は原作に寄った分だけ前作のような生っぽさが薄れたが、それが良くも悪くも作品の少年マンガらしいトーンを形成したと思う。残虐な描写が前作ほど刺激的でなかったのは、演出の方向性だけが要因ではないだろう。
作画はBONES制作だけあって、最後まで作画枚数を使ったアクションを楽しめた。田中宏紀亀田祥倫といった個性あるアニメーターのまとまった仕事は記憶に残るほど。もちろん細かい芝居作画やメカ作画もよくできていた。ただ、よくコントロールされた上で暴走していた前作と比べ、よりアニメーターの個性が前面に出ていたのは好悪が別れるところかな。1年以上も放映しながらクオリティを保ったのは、参加スタッフの自由裁量を許したからこそだろうと想像できるので、私は何の文句もないが。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20090405/1239206406

*2:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20091011/1255563575

*3:もっとも原作からして、この時期の描写は無駄に引きのばしている感がある。