法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ハートキャッチプリキュア!』第15話 なんと!生徒会長がキュートな服着ちゃいます!!

なんと!キュアマリンがあっさり我慢の限界を突破した!!


脚本は米村正二が担当。作画監督は生徒会長の物語が最初に描かれた第7話*1に続き爲我井克美。
ファッションも武道も生きる楽しみとして目標として両立しうるとする結論は悪くない。生徒会長のキャラクターをほりさげつつ、今シリーズの方向性をわかりやすく見せる。女性性の押しつけや、それを反転した男性化や女性嫌悪に向かわず、個々人の多様な生き方を肯定する。
これはプリキュアシリーズ全体、もっといえば『美少女戦士セーラームーン』以降の女児向け東映アニメ作品が徐々に提示してきたテーマともいえるだろう。
よくわかる現代魔法変身少女 - 法華狼の日記


しかし、今回は話をつめこみすぎていた。密度が濃い話という意味とは少し違う。新規の登場人物が多すぎてさばききれず、出来事の途中経過をいくつも飛ばしてしまっている。冒頭で指摘した決め台詞の唐突さもそうだし、敵を見つける場面も今シリーズとしては安易。
たとえば、生徒会長の母親は物語の前面に出さず、今回は兄に一本化して整理すべきだったのではないか。生徒会長の対としてデザトリアン化した道場破りの少年も、ありきたりでいて描写を重ねなければ説得力が出ないキャラクターなので、放送時間を圧迫している。
アクション作画はよく動いていたし、早々と必殺技をはなとうとした瞬間に敵幹部クモジャキーが驚天動地の技を披露するところも楽しかったが、そもそも道場破りの少年がかかえた鬱屈がほとんど描かれてなく*2、あまり戦い自体にのりきれなかった。


厳しいようでいて世代を考慮すれば充分に自由主義者な祖父は良かったし*3、妹に感情移入して涙ぐんでくれた少女の頭をなでる兄の描写なども細かく、道場破りの少年も単独で見れば悪くはない。
語り口が拙速だったことのみ悔やまれる回だった。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20100321/1269354261

*2:祖父の厳しさを描写する時に、反則をおかした者を最近も処分したばかりという説明を序盤に入れておくとか、前振りをする余地はあっただろう。

*3:ここで祖父が慎重に描かれていることで、クモジャキーの蠱惑的な魅力はやはり制作者が意図して克服対象として描いていることがわかる。