演出は小川孝治で、作画監督は川村敏江。
作画が整っている上、顔の表情もアクションも良く動くし、土煙のフォルムも立体的に細かく書き込まれている。良い原画もそろっていたようだ。
室内や屋外の光源や影を意識した演出構成もいい。時々の心情を映すように逆光や暗所を駆使しつつ、影に隠れていた母の写真へ光が当たるクライマックスへといたる。演出の意図が明確で、単に映像として見ても美しい。
脚本は成田良美。母を亡くした少女が母の日に対して感じる鬱屈という導入は、正直にいってあざといと感じた。笑える敵描写をはさんだり、当の姉妹が健気に笑っているところも、娯楽として重くしすぎないために効果的だが、教科書通りといえる。
しかし、主人公の過剰な思い入れを姉が笑って受け流す序盤から、遺族の心情というものが典型的な物語構図におさまらないものだと慎重に描いているところは良かった。さらに姉妹間の擬似母娘な関係とその破綻を描くことで、典型的な母親像を求める心情に対する批判も物語に組み込まれているといえる。その意味では、深く踏み込めそうな場面に亡母の記憶で踏みとどまったことが残念ともいえるが、娯楽作品として時間内に収めるためには順当なところだろう。
あと、いつものように主人公が花の豆知識を披露しようとすれば母を亡くしている視聴者への配慮が難しそうだと心配していたが、そもそも今回は豆知識を全く語らず、一安心した*1。幼い視聴者への配慮がほしいというだけでなく、大人視聴者としても主人公が無遠慮な発言をして物語内で決着されないとつらく感じるものだ。