法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ザ・コーヴ』への批判で文化ナショナリズムを持ち出す意味

映画『ザ・コーヴ』で批判対象となった太地町だが、日本国内からも心無い誹謗中傷の投書が届いているという。有名になったこともあり、取材の過熱も予想される。今後のイルカ漁は困難となるだろう。そもそも、映画で批判される以前にイルカ肉の需要が落ち込んでいるという報道もある。
そこで思ったのだが、有志をつのって太地町のイルカ漁を支援する企画を立ててはどうだろうか。資金をもちよってイルカ肉を購入し、企画者が責任を持って食べることで安全性を広報する。美味しい料理に舌鼓をうつ姿をドキュメンタリー映像にしたてることで、イルカ肉の需要を喚起すると同時に、『ザ・コーヴ』への反撃とする。
濃縮された水銀の危険性を指摘する報道は国内にもあるが、食べると即座に体調を悪くするというわけでもない。ついでに、同じく漁獲制限されそうで水銀濃縮の危険性指摘も共通するクロマグロも購入すればいい。日本の食卓を攻撃する外国への痛烈な反撃となるだろう。
余った募金は飲み代に回せばいい。たとえば裁判費用にすべき募金を飲み代に回すなら問題だろうが、イルカ肉やマグロ肉を美味しく料理し食べるために、むしろ日本酒は必須といっていい。
ブルーレイに映像記録媒体が移行しそうな昨今だが、ついつい私はDVDを買ってしまう。そういうところで微々たる収入を散在してしまい、あまり豪勢なものを食べていない。目の前でイルカ肉が供されれば、喜んで箸を伸ばせる私がいる。
しかし、今の私には人集めする時間や余裕がない。もったいないが、この企画をid:blackseptember氏へ100はてなポイントでゆずってあげよう。


……いきなり何の話題かと思った人もいるだろうが、要するに映画『ザ・コーヴ』への反発にナショナリズムが散見されることから、愛国詐欺を思いついたわけである。上記に書いた内容は、blackseptember氏が愛国詐欺立案に人生をささげていることをふくめ、おおむね事実である。
そして現実に愛国詐欺が始まっているらしいこと、これも事実である。
侍蟻SamuraiAri 極左カルトに立ち向かうネオ民族派!:反日映画ザ・コーヴ上映を許すな!*1

<緊急街宣のお知らせ>

日本人よ怒れ!
大和魂反日映画 『ザ・コーヴ』の上映を粉砕するぞ!

欧米白人の下僕を演ずる配給会社(株)アンプラグドを解散に追い込め

【日時】
平成22年4月9日(金)11:30集合

【呼びかけ】
主権回復を目指す会NPO外国人犯罪追放運動せと弘幸BLOG『日本よ何処へ』

……西村修平氏を代表とした、いつもの運動だ。映画上映の「粉砕」を目指すのみならず、配給会社の解散まで目指すとあっては、表現の自由に対する攻撃と呼ばざるをえない。

 世界の映画界では反日を掲げれば何でもかんでも「賞」が貰える。
 今回は第82回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門でアメリカ映画『ザ・コーヴ』が受賞した。
 この『ザ・コーヴ』は、日本のイルカ漁を盗撮した挙げ句、「虚偽の事項を事実のように表現」(大地町長、漁協)したおよそドキュメンタリーとは似てもにつかない代物である。

ドキュメンタリーというものが作家の主観で現実を切り取った作品であることを知らないことは、まだいい。
しかし、反日を掲げれば世界の映画界で賞がもらえるとは、映画賞に輝いた作品や作家、あるいは映画賞を目指す作品や作家に対して失礼ではないか。

 映画を利用して日本人を貶める手法は歴史問題においてシナと欧米白人が積極的に利用してきている。映画は日本人を洗脳するというより、世界の人々を広く洗脳する。『ラスト・エンペラー』、『赤いコーリャン』、『シンドラーのリスト』、『鬼が来た』など欧米での賞を獲得し、その賞が作品にさらなる真実性を付加して、日本軍の残虐性(南京大虐殺など)を観るものに注入する。
 『ザ・コーヴ』は反捕鯨と並んで、欧米白人が利用する日本の民族性を貶め我が国の食文化を破壊する反日プロバガンダ以外の何ものでもない。

……まさか『シンドラーのリスト』が欧米白人による反日映画とは、寡聞にして知らなかった。いや確かに映画で批判されているナチスドイツは、大日本帝国と同盟しており、間接的に日本を批判していると見ることもできるかもしれない。しかし主人公のシンドラー自身もナチス党員であり、単純に属性で割り切れない普遍的な義を描いたからこそ評価された作品とばかり思っていたが、そうか反日映画だったのか。
ラストエンペラー』も日本軍の残虐行為を描写しつつ、音楽を担当した日本人がアカデミー賞に輝いた映画でもある。過去の日本より現在の日本を愛する私としては、日本の素晴らしさを海外へ喧伝しうる作品だと思っているのだが。
「注入」という表現も濃厚で味わい深い。

ザ・コーヴは印象操作にまみれた映画でドキュメント作品には程遠い。その中では驚くなかれ「学校給食に出し子供達に食べさせているイルカに水銀が含まれている」などと解説しているのだ(そのような事実はない)。

ほとんど国内では報じられていないが、事実はあると見て間違いない。学校給食にイルカ肉が出回ってしまった問題は現地の議員がブログで情報公開もしており、以前にも日記で紹介したことがある*2


そして抗議活動は実行に移された。
侍蟻SamuraiAri 極左カルトに立ち向かうネオ民族派!:[反日映画]精神テロに加担した守銭奴を許すな!
文体からして「!」や「?」ばかりで、ついていけないものを感じる。

日本人があたかもイルカを大量殺戮し、しかも水銀に汚染されたイルカを食用に輸出しているなど、そんな嘘偽りを描いた映画は反日映画! 日本に仕掛けられた情報戦争だ! それに加担しているのがアンプラグド! ここまで日本が貶められても反日映画を上映したいのか!?

しかし日本がらみでクジラ肉が密輸入されているという情報は、国内からも同様の報道が出ている。
http://www.asahi.com/national/update/0414/TKY201004140196.html

 日本と韓国で、同じナガスクジラからとられた肉が販売されていることが、日米韓のチームによるDNA鑑定で分かった。鯨肉の国際取引は原則禁止されている。チームは、日本が調査捕鯨で捕獲した鯨の肉が韓国へ密輸された疑いがあると主張している。さらに、日本国内の調査では、出所不明の鯨肉が流通している疑いもあったという。14日付の英専門誌に発表した。

 このチームは、米オレゴン州立大のスコット・ベーカー准教授やソウル大の研究者、非政府組織の「国際動物福祉基金」(IFAW)日本支部メンバーらで構成。日本でのイルカ漁を告発し、米アカデミー賞を受賞した「ザ・コーヴ」の監督も参加している。

水銀汚染されたイルカ肉が出回っていたことも事実だろうから、それが輸出されているという話も簡単に嘘偽りと断言できるようなことではない。


そうして街宣内容を見ていくと、思わず目を疑った。

どんな程度の悪い映画でも反日映画でありさえすればマスコミから絶賛されてヒットする仕組みになっているのが今の映画界! アンプラグド社長の加藤武史は俺たちをレイシストとして描いたドキュメント映画でも作ってみろよ! よほど日本のためだ!

……自覚があったのか。

あんた電話で俺に何て言った!? 「映画を観てから判断して下さい」だと!? マスコミしか試写会に呼ばないで批判する国民には一切公開しないで、どうやって判断するんだよ!? 反日映画は精神テロ! 一旦公開されたら誤った情報が伝播してこれを取り除くのは不可能なんだよ! 我々のために公開するのか!?

……見ずに内容が間違っているとか断言していたのか。


ともかく、上記の抗議活動は『創』編集長の篠田博之氏も言及している。
映画「ザ・コーヴ」に気になる上映中止騒動が・・・ (篠田博之の「メディアウォッチ」)

 その意味でこの「ザ・コーヴ」上映がどうなるかは、様々な意味で重要な問題だ。有意義な議論を作るためにも、まずメディア関係者などその機会を与えられている人たちはできるだけ試写会などに足を運んでほしい。一時は大きな議論になりながら、喉元過ぎると一気に忘れられてしまった映画「靖国」をめぐる事態から、我々が何を学習したかが問われているといえる。

そう、忘れてはならない。
人が表現という情報伝達手段を用いている限り、表現の自由というものは、ねだらず与えて勝ち取らなくてはならないのだ。

*1:文字強調は引用時に廃した。

*2:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20100323/1269355491で、報道状況をふくめてまとめた。