法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

確かに子供手当には抜け道がある

ただし、その抜け道は重厚な門で閉ざされていて、警備員が常駐しているわけだが*1
そもそも在日外国人の扱いを色々な報道で見聞きしていれば、役所というものが優しくないということくらいわかりそうなものだろう。「社会通念」で線引きすると決めた場合、日本の役所は社会通念を逸脱するような厳格さを示すことがよくある。
http://mainichi.jp/select/today/news/20100424k0000m010117000c.html

2010年4月24日 2時31分 更新:4月24日 2時46分

 兵庫県尼崎市に住む50歳代とみられる韓国人男性が、養子縁組したという554人分の子ども手当約8600万円(年間)の申請をするため、同市の窓口を訪れていたことが分かった。市から照会を受けた厚生労働省は「支給対象にならない」と判断し、市は受け付けなかった。インターネット上では大量の子ども手当を申請した例が書き込まれているが、いずれも架空とみられ、同省が数百人単位の一斉申請を確認したのは初めて。【鈴木直】

 尼崎市こども家庭支援課の担当者によると、男性は22日昼前に窓口を訪れた。妻の母国・タイにある修道院と孤児院の子どもと養子縁組をしていると説明し、タイ政府が発行したという証明書を持参した。証明書は十数ページに及び、子どもの名前や出生地、生年月日などが1人につき1行ずつ書かれていた。担当者が「養子はどの子ですか」と聞くと「全員です」と答え、男女で計554人と説明したという。

 男性には実子が1人いる。子ども手当は月額1人につき1万3000円(10年度)で、計555人分が認められれば、年間8658万円の手当が支給されるが、厚労省子ども手当管理室は「支給はあり得ない」と言う。

つまり、照会に対して厚生労働省は受けつけなかったわけであり、厚労省子ども手当管理室も重ねて否定した。つまり抜け道が閉ざされていることが確認できたという記事である。
以前から何度もインターネットで流れた子供手当大量申請情報が、この記事で架空と指摘されていることも注目したい。
しかし、支給要件を簡単であるかのように説明しているところはいただけない。

 今回のようなケースについては、国会審議で野党から問題点として指摘されていた。手当の支給要件は(1)親など養育者が日本国内に居住している(2)子どもを保護・監督し、生活費などを賄っている−−の2点だけ。母国に子どもを残してきた外国人にも支給されるうえ、人数制限もなく、機械的な線引きが難しいためだ。こうした盲点を突かれ、ネット上では「100人を養子縁組しても手当はもらえる」といった書き込みや批判が絶えない。同省は今月6日、ホームページに「50人の孤児と養子縁組をした外国人には支給しない」と記したものの、根拠は「社会通念」とあいまいだ。何人以上なら不支給という明確な基準はなく、同様の申請が各地で続発しかねない状況となっている。

 尼崎市の男性は、子どもへの送金証明や面会を裏付けるパスポートのコピーなど外国人に求められる書類をそろえており、事前に調べてきた様子がうかがえた。市の担当者は「可能ならもらおうという意欲を感じた」と話している。

毎日新聞は記者ごとの裁量権が強いといっても、同じ題材で先に自紙が報道した内容くらいは説明に組み込んでおくべきだろう。この記事だけでは、なぜ「面会を裏付けるパスポートのコピー」が必要なのかがわからない。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100407k0000m010080000c.html

 厚生労働省は、国内に住み母国に子供がいる外国人に対する子ども手当の支給要件を厳格化する通知を各自治体に出した。年2回以上面会していることをパスポートで確認することなどが柱。児童手当は比較的緩やかな条件下で支給されてきたが、高額の子ども手当で不正受給を防ぐことを狙った。

 児童手当は、子を養育する権限があり、生計を維持する保護者に支給。母国に子がいる外国人については、出生証明書と送金証明書があり、面会するなどしていれば支給してきた。だが面会の立証は困難で、手紙の提示だけでよかったり、証明を求めない自治体もあった。証明書の偽造も可能と指摘されており、不正受給目的の養子縁組の横行などが危惧(きぐ)されていた。

 このため厚労省は、少なくとも年2回以上の面会をパスポートで確認▽約4カ月に1回以上の送金を銀行の送金通知などで確認▽来日前の同居を居住証明書などで確認−−などを、子ども手当の支給要件と定め通知した。

 厚労省によると、母国で児童手当を受給する子どもの数は把握されていない。年度末に子ども手当の駆け込み申請があった自治体もあり、今回の通知に対し、自治体側からは「事務負担がどのくらい増えるか未知数」と懸念する声も上がっている。【野倉恵】

毎日新聞 2010年4月6日 21時29分(最終更新 4月7日 0時01分)

保護監督している書類もそろえなければならない上に、年2回以上は帰国して面会していることが確認される必要があるのだ。
そもそも、ある面では子供手当よりも自民党政権時代の児童手当が容易に支給できていた。民主党は抜け道を厳重に管理するようにしたわけだ。


しかし毎日新聞記事に対する意見もひどい。
はてなブックマーク - 子ども手当:韓国人男性が554人分申請 孤児と養子縁組 - 毎日jp(毎日新聞)
抜けないと示されている道を「抜け道がある」と主張していたが、抜こうとして実際に抜けられなかったことが報道された。すると「抜けるように見えるのが悪い」と来る。それどころか変わらず「抜け道があるのが問題」という主張を続ける者までいる。
いわゆるマッチポンプに近いが、別に火消しをしているわけではない。
たとえるなら、はしごを2階からおろして泥棒をそそのかし、厳重な警備をしかれていると知らない間抜けな泥棒が警備員に捕まったら「なぜはしごをかけられるような作りにした!」と2階から怒っているようなものだ。2階にひきこもってないで家を出てみようよ、とつっこみたくもなる*2


理想をいうならば、行政の内容は最低の理解力を持つ人にも理解できるよう、現政権に反発を感じている人にも納得されるよう、充分に説明されるべきではある。
しかし、児童手当については最初から堂々と説明したくないんだろうな、という気もしている。それも、排外主義に基づいて児童手当てを批判している者とは全く逆の意図で。在外の外国人児童まで子供手当てを出すのは、自民党政権時代の児童手当でも行われていたし、難民条約のからみでしかたなく国籍条項を撤廃した面もある。
つまり自党の手柄にしたいと同時に、本当は現状でも不十分なことを隠すため、八方ふさがりにおちいっているのではないか、という気がするのだ。民主党を八方美人と評する意見を見ていて思いついただけの、あくまで憶測に過ぎないが。

*1:そもそも、不正が可能ということは撤廃する十分条件ではない。年金も救急車も生活保護も、あらゆることが不正利用できるし、実際に不正利用されているという報道もある。年金や生活保護ならば受給資格がない者の中に受給者を攻撃する人もいるだろうし、不要論を唱える人もいるだろうが、救急車不要論を主張する人はさすがにいないだろうと信じたい。

*2:「たとえるなら」と書いているように、あくまで比喩表現である。