法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

ドキュメンタリーや報道の本質を感覚的につかみたいなら『FLAG』を見るのだ

近未来の架空地域を舞台としたロボットアニメなのだが、キャラクターからロボットのデザインまで、一般的な商業アニメから外れた内容になっている。バンダイチャンネルで1話無料配信中。
FLAG | バンダイチャンネル|初回おためし無料のアニメ配信サービス
戦場写真として示される静止画に、重く重なるモノローグ。壊れた構図をノイズが覆う。白洲次郎の名を託されたヒロインを、平和の目撃者として祭られる彼女を、師であるカメラマンが追う。
ロボット兵器に頭部はなく、兵士から顔という表情は奪われる。もはやそれは人の形を成していない。戦いのため人の補助を行っていたはずの機械が、奇形的な進化の果てに、たまさか人の姿に似た何かだ。
そして物語は様々な視点からの映像として提示される。架空の事実を描くために、時には不明瞭な映像や、被写体がレンズから消えた写真まで使用される。空白を積み重ねることで構築される、嘘の真実。
その象徴として選ばれた無言の表現。それゆえに「FLAG」。


わざわざ手書きアニメでフェイクドキュメンタリーを作るという演出趣向だけでなく、2人のジャーナリストが少し違う立場から同じ事件を追うという構成自体が、ドキュメンタリーが事実の一部を作家の意図で切り取ったものと示す。総監督自身が語っている通り、実写ならば凡庸になりかねない構図も、手書きの絵として提示されることで異様な迫力を生む。
……それにしても、つくづく変なアニメだとDVDで見返して思う。演出という観点からは、高山文彦のレイアウトを都留稔幸のカッティングで処理したという感じなのだが、たぶんこの説明では両演出家を知っている人にすら伝わらない。ずっと以前に紹介エントリを書くと宣言したまま放置しているんだよな。