エレメントハンターはネガアースから帰還できず、取れる手段も限られており、自然と地球とコロニーを中心に物語が進行する。
いかにも急造品なデザインのマントル突入システムを対立勢力が協力して動かすという展開には、いやおうなく燃える。この感覚は、もはや反射神経といっていい。主人公達が隠してきたカー博士の本拠地にコロニー側の人々を迎える描写*1で決着の近さをうかがえさせ、1話いっぱい使って作中時間の経過も感じさせる。ネガアース側の主人公達が選択肢を探ったり、さらりと告白をしたりという姿で変化をつけているのもメリハリがあっていい。
他方、火星移住計画を強行に主張していた川嶋が移住に関する利権を口にする場面は、考えてみれば当然の話であり現実味もあるが、現状最大の敵役としては格が落ちるので一工夫してほしかったな。たとえば、「私一人が翻意しても、多くの利権がからんでいる火星移住計画を今さら止められるものか」といった意味の台詞に変えるとか。
さて、アンドロイドだからと自己犠牲をためらわず、人間に似せながらも根本的に異なる知性だったユノ。
だが、分解される最期の直前に人間らしい涙を流す。漠然とした奇跡ですませるのではなく、死の可能性を持つことで生物となり、複製されえない固有の記憶*2を持つ価値を自覚することで人間となる、そういうSFらしい手順をきちんと踏んでいることが素晴らしい。ひるがえって、人間とは何かというSFが描き続けてきたテーマをも、暗に示した。