法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

今さらながら『今日からマ王!』が面白い

読書数がめっきり減って、最新流行のアニメも見なくなった最近、以前にNHKで放映されていた*1今日からマ王!』の録画を連続視聴している。異世界における「魔族」と「人間」の対立に人間として育てられた魔王が直面し、解決していくという物語だ。
ただのヤオイ風味ライトノベルを安くアニメ化したファンタジーかと思えば、『シムーン』『truetears』の西村純二監督や『とらドラ!』の岡田麿里脚本*2といったスタッフの、現在の高評価に繋がる源流が感じられる。
原作は未読なのでどこまでアニメスタッフの功績かはわからないが、意外ととっつきやすく面白い。


まず、てらいなく実直に物語をつむいでいるために、引っかかることなく主人公へ感情移入できるし、かといって葛藤や困難を避けた作劇がされているわけでもない。わりと真面目に異なる種族の文化や政治の軋轢を寓話化しており、善意と理想主義に満ちた主人公の言動は良い結果をもたらしつつも、全てを解決するほど御都合主義ではない。
安易な設定さえも、その安っぽさが一貫しているおかげで、一定以上の現実味を損なうことがない。設定を使い捨てないので伏線が収束するような楽しみもある。細かい設定で世界観を徐々に構築するという、近年のマニア向けアニメがインパクトを重視して忘れがちなことを真面目にやっている*3
いかんせんスタジオディーン制作の作画は安っぽく、まれに著名なアニメーターが参加してもさほど画面に反映しないが*4、低位安定しているために連続視聴すれば気にならない。


そうして普通に面白いと思いながら視聴を続け、サブレギュラーが過去を回想するシーズン2第47話「いのちの証」を見て驚いた。まさかコレを堂々と映像で見せるとは、全くの予想外。
真相を知って冒頭から見返してみると、しっかり様々な伏線が張られており、全く違った感慨を持ちながら楽しめる。
いささか映像の捏造は卑怯かと思ったが、回想という主観視点と気づけば納得できる。
真相が明かされる終盤、その映像自体の衝撃度も凄惨にして醜悪だ。作画の悪さが逆に演出として効果的。しかし最終的に、サブレギュラーの視点から主人公の視点へドラマを受け渡し、引っかかるものを残しつつ前向きに終わる。
この一話だけで物語は完結しており、特に作品固有の設定を知っておく必要はない。機会があれば、是非ともこの回を見てほしい。

*1:現在、地上波でシーズン3が放映中。

*2:シリーズ構成は別人。

*3:もともとNHKアニメ全体が、販促などでシリーズ構成が変更されがちな民放向けアニメより、話数を重ねることで面白味を増す傾向にある。

*4:和田高明参加回が少し良かったくらいか。