法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

終身刑導入反対を主張する江川昭子エントリは疑問だらけだが

Egawa Shoko Journal: 私が終身刑の導入に反対するワケ
すでにブックマークで様々な視点から批判されており、今さら大きく付け加えることはない。
はてなブックマーク - Egawa Shoko Journal: 私が終身刑の導入に反対するワケ
一つ思うのが、江川昭子氏は松本死刑囚へ直接的な対話をしていないはずで、最後の段落における批難は自らで作り上げた架空の松本死刑囚への憎悪と感じる。感情的にはしかたない面があるが、死刑を望む自身の感情的動機は自覚しているが、死刑を望んでいる対象を一個の人間として把握する機会がないことの自覚は見受けられない。
「自己に向き合う」 - apesnotmonkeysの日記
上記でApeman氏が紹介しているような状況に、江川氏が立てばどうなるだろうか。
松本死刑囚が拘禁反応を起こしているという報道が事実ならば、もし面会すれば江川氏も何かしら感じられるのではないか……という観測は希望的にすぎるとしても、囚人の情報が極めて制限されるという死刑制度の現状なども視野に入れてほしいところ。


ただ、いくつかの批判とは意見が合わないと感じる部分もある。たとえば江川氏は以前から公に死刑制度維持をうったえ、松本死刑囚への死刑を望んでいたので、今回から急に劣化したというわけではない。
また、江川エントリは最終段落で個人的な感情を露呈したことが強く複数の人々から批判されているが、個人的には今回の江川エントリで評価できる数少ない箇所だと思う。ドキュメンタリーやノンフィクションは、原理的に不可能な客観を装うより、主観であることを明かすべきなのだから。むしろ、自身に死刑制度存置論へ傾く感情的な背景があることを、冒頭から断り書きするべきと感じたくらい。
そういう江川氏の事情を斟酌して読むならば、知人をむごたらしく殺されたジャーナリストならではの文章として、いろいろと感じるところがある。


ドキュメンタリーもまた作家の作品とよく指摘されるが、それゆえに取材対象だけでなく取材者自身を写す鏡にもなる。