手塚治虫生誕80周年記念かつフジテレビ開局50周年記念のSPアニメ。
監督は、先に情報を得ていたとはいえ、やはり実際に見ると意外に感じる谷口悟朗。子供向け、もしくはファミリー向けアニメに関わるのは『爆闘宣言ダイガンダー』以来だろうか。抜擢されたのは、制作協力の高橋良輔*1繋がりか。
連名ながらコンテや演出も担当。監督した『コードギアス反逆のルルーシュ』ではコンテや演出をあまり直接的に行わず、他作品へコンテマンとして参加することもなかっただけに、ボリュームある谷口演出を久々に見られた気分。目元や手元のクローズアップ、アクションでのPAN多用、要所のキャラクター演技で1コマ使用、といった演出に特徴が出ているかな。動物視点ということもあって、低いカメラ位置が多用されているのも面白かった。
キャラクターデザインには木村貴弘が参加し*2、服飾の色指定もカラフル*3。手塚プロダクションらしい絵柄の癖はそこかしこに見られるが、かなり最近のマニア向けアニメらしい線が出ている。
原画にも、サンライズ作品、特にアニメアール関係のアニメーターが目立つ。終盤で猿が弾むようなアクションをしていたり、人工島の大崩落がていねいに作画されていたり*4、作画枚数が多いだけではない巧い作画が楽しめた。
物語……特にテーマ設定……はどこか谷口監督作品らしくない。原作が存在した『プラネテス』*5よりさらに“らしさ”が薄く、他監督作品へ一演出家として参加した時のようだ。
ファミリー向けにわかりやすくしたのか、葛藤や主張を台詞で説明しているのも、あまり谷口作品らしくない。唯一成功したというクローンが何者なのか明示されていなかったり、本編で回収しきれていない伏線もいくつかあった。
場面ごとに両極端なキャラクターを対立させて葛藤させる語り口は谷口作品でよく見られるが、あくまで企画先行作品を谷口演出でそつなく仕上げた感じ。
なお、脚本は構成作家の鈴木おさむ。関わった作品について知らないので何ともいえないが、こういうスタッフを起用する辺りが企画先行と感じさせる*6。
全体的に、記念アニメとしては珍しく娯楽に徹し、マニア視点でも相応に見所が多かったのは嬉しい。
テーマも安易な自然賛歌なようでいて、人工的な「自然」と暴力的な真の「自然」という観点にも注意がはらわれ、最も人間に反抗した者の来歴などでもエクスキューズがあった。
谷口悟朗監督のそつなさが良い意味で出ていたと思う。
あと、イベントを連発して飽きさせないところとか、狂的なキャラクターを使い捨てて状況を大きく動かすところとか、さんざん葛藤させて難問に直面させておきながら最終的に肩透かしするところとか、良くも悪くも娯楽優先な部分が、谷口作品らしいと同時に手塚作品らしいと感じた。
この共通項は面白い。